4.

 

 

 

「おや、清太郎君は随分難しい言葉を知っているんですね」
傍らで何も言えず口をパクパクさせている悠理を横目に清太郎ににっこり微笑んだ。
「うん、いつもね、パパとママもね、さっきのお兄ちゃん達みたいにケンカするの。でもね、すぐに仲直りするんだよ。僕はねお友達とケンカしたらなかなか仲直りできないんだけどね、パパとママはお互いに大好きだからケンカしてもすぐに仲直りできるんだって。そおいうの恋人って言うんでしょ?」
「そうですか、清太郎君のパパとママはとっても仲がいいんですね。でもね、残念ながら僕と悠理は恋人同士ではないんですよ」
「えぇ、違うの?パパとママみたいに結婚するんじゃないの?」
「僕はそうしたいんですけどね。悠理の方がなかなかうんと言ってくれなくて」
「お兄ちゃんも大変なんだね」
「おい、清四郎!お前子供相手に何言ってんだよ!」
さすがに悠理も冗談じゃないとばかりに口を挟む。
「だって本当のことでしょうが。この間だって、僕がプロポーズしたのに悠理ってば怒鳴ってどこかへ行ってしまったじゃないですか」
「あ、あんときゃお前がヘンなことばかり言うからだろ」
「僕、何か変なこと言いましたっけ?」
「だ、だいたいプロポーズったって、あれは冗談なんだろ!」
「冗談なんかで結婚しようなんて言いませんよ」
急に真剣な眼差しになる清四郎。
「へっ?」
「まぁ冗談だと思われても仕方ない言い方をしたかもしれませんけどね」
のんびりいこうと思っていたのに、まさかこんな形で気持ちを伝ることになるとは思ってもいなかった清四郎は苦笑するしかなかった。
「あ、あたい・・・」
何か言いかけた悠理の言葉をさえぎって
「わかってますよ。別に返事は期待していません。悠理は悠理のしたい様にすればいい。他に結婚したい奴が現れて、それで悠理が幸せになれるんだったら僕は応援しますよ」
その言葉に思わず清四郎の顔を見上げる悠理。
清四郎の顔は笑顔だったが、どこか少し無理があるようにも感じられた。
「ただし、今日は付き合ってもらいますからね。清太郎くんだって悠理が一緒の方がイイですよね」
悠理にこれ以上この事で考えさせたくなかった清四郎は話を変えた。
「うん!お姉ちゃん、一緒にあそぼ!」
「清四郎・・・」
「さて、まずはお昼ご飯を食べに行きましょうか。清太郎君何が食べたい?」
「う〜んとね、ハンバーグ!」
「ハンバーグですか、悠理、どこか美味しいところ知ってますか?」
悠理は清四郎の切り替えの早さについていけないでいる。
「ほら、いつまでもそんな顔してないで下さいよ。悠理にそんな顔は似合いませんよ」
「そんな顔ってどんな顔だよ!よーし、こーなったらとことん付き合ってやる。清太郎!あたいがハンバーグのちょー美味しいところ連れってってやるよ!」
悠理は開き直ることにした。

 

 

 

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