3.
「な、なに言ってんだよ、とーちゃん!」 「ヘンな事言わないで下さいよ!」 二人そろって叫んだ。 真っ赤になる二人に、 「なにも照れることねーだがや。そうだ悠理おめも今日はこの二人に付き合うだよ」 「えぇ!」 「おめもいつかは母親になる日がくるだ、そん時のええ予行練習になるだがや。ちゅー訳で清四郎君、悠理のことも頼むだ。悠理しっかりやるだよ」 そういってさっさと帰ってしまった。 清太郎はどうやら自分を構ってくれる人間がもう一人増えたことを知り、清四郎の腕の中でにこにこしている。 「悠理が、母親・・・」 万作の言葉に呆然となっている清四郎。なんだか実感がわかないがいずれそういう日がくるのかもしれない。そう思いながら思わず悠理の顔を見た。 「たっくとーちゃんてばなに言ってんだか。あたいが母親だって・・・」 そこまで言って清四郎が自分を見ていることに気付いた。 「なんだよ」 「いいえ、別に。それより付き合ってくれるんですか?僕としてもその方がありがたいんですけどね。これからどうしようかと思っていたところだったので」 清太郎もじっと見ているので悠理は断るに断れなかった。 「し、仕方ないから、付き合ってやるよ。けど別に予行練習とかそう言うんじゃないからな!」 「わかってますよ。悠理が母親になるなんて、正直想像できませんからね。本当にそんな日がくるんでしょうかねぇ」 「バカにすんなよ、あたいだってもてるんだからな。その気になりゃ子供ぐらいバンバンつくってやるんだからな!」 「はしたない。僕が言ったのはそう言う意味じゃありませんよ。悠理が子供を育てるのが想像できないと言ったんです。それに悠理が男にもてるなんて初耳ですけどね」 冷ややかだが尤もな清四郎の言葉に言い返せなくなったのか、悠理は清太郎に向って 「な、こいつ本当にエラソーだろ?いつもこうなんだぜ」 と矛先を変えた。 清太郎は二人の会話の内容は全くわかっていなかったが、そこは純粋な子供で二人の間に何かを感じ取ったらしく 「お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人同士なの?」 無邪気な顔で聞いてきた。
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