2.
「珍しいですね。二人そろってうちにくるなんて」 普段はめったに病気などしない二人である。 「あたいはどうも無いんだけど、とーちゃんが腹の調子が悪いって言うもんだから。あたいも暇だしついてきたんだ」 「おじさん、何かヘンなものでも食べたんですか?」 この親子に関しては病気でというよりは、食べ過ぎとかそう言ったことしか思い浮かばない。 「いやぁ、昨日ちょっと食べ過ぎただよ。わしももう歳かの。昨日悠理と食べ比べをしてたら、今日になって、腹が我慢ならねーほど痛くなっただよ」 やはり食べ過ぎであったか。 「悠理と食べ比べなんて、相当食べたんでしょ。悠理と張り合ってどうするんですか」 本当にこの親子は仕方が無い。 「親父は今来客中ですよ。今から診察はもう無理だと思いますが」 修平は万作の主治医であったことを思い出して言った。 「あー、診察はもう終わったんだ。とーちゃんが診てもらってる時にそのお客さんってのが来たみたいだったぞ。それより、お前そのガキどーしたんだよ」 「そうだがや、わしもさっきから気になってんだがや」 清四郎の足元に隠れて、清太郎が顔を少しだけ覗かしている。 「この子はそのお客さんの子供ですよ。清太郎君というんです。親父がこの子の父親と話をしている間僕が預かることになったんですよ」 「清太郎?なんだ、清四郎の名前と似てるな。実はお前の隠し子なんじゃないのか?」 「せめて、弟と言って下さいよ、まったく」 悠理は清太郎の傍にかがむと 「あたい悠理ってんだ、よろしくな。このえらそーなにーちゃんの友達なんだ」 その言い方がおかしかったのか清太郎は初めて笑顔を見せた。 悠理もにっこり笑うと清太郎を抱き上げ清四郎の顔に近づけた。 「顔はやっぱり似てないな」 などと言いながら、二人の顔を見比べている。 どちらかと言えば悠理の方に似ていた。 「当たり前でしょ。それよりその子をこっちに貸してください。悠理が抱いてると何だか危なっかしくって。」 「大丈夫だよ」 と言いつつも、やはり重かったのか素直に清四郎に預けた。 片腕で清太郎を抱っこする清四郎、それをそばで見ている悠理を見ていた万作は 「なんだか、おめらそうしているとホントの家族みたいだがや」 と呟いた。
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