「半月」 By 麗
「あっ見て!綺麗な月〜」 悠理が指差す方を見れば、そこには半分に割れた月。 今宵は半月、上弦の月。 春の盛り、雨上がりの匂うような空気の中、ぽっかりと浮かんで周りの夜空を染めている。
「本当に、綺麗な月ですね」 二人並んで、しばし見とれる。
「なぁ、お月さんの半分はどこに行ったんだろう?」 悠理が呟く。 月の半分は、地球の影の中。 そんなことぐらい、いくら彼女でも知っているだろうが、無邪気に浮かんだ疑問を口にのぼせる、 そんなところを僕は愛している。
「お月様の半分はね…」 その答えを、周りの景色の中に探しながら、僕は口を開いた。 「ほら、そこに落ちていますよ」 僕の指が指し示すのは、通り雨が作った小さな水溜り。 ゆらゆらと、空の片割れを映して揺らめく。 「本当だ」 嬉しそうに悠理が応え、水溜りを覗き込む。少し遅れて、僕も覗き込む。
水に映った二つの月は、一つに重なった。
end
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