おまけ(清×悠R)

 

 

 

聞こえてくるのは波の音。

窓から差し込む月の光。

のどが乾いて目を覚ますと、可憐の姿がない。

ゆっくりと悠理はベッドから起きあがった。

すやすやとよく寝ている野梨子を起こさないように、そっと部屋を出た。

リビングルームのソファに座っていたのは、可憐ではない大好きな黒い影。

「せいしろー」

悠理は後ろから首に抱きついた。

「…悠理」

振り返った清四郎は月に照らされてとても優しい。

「んー?のど乾いちゃってさー」

間延びした返事をして、悠理はするりと腕をほどいてダイニングへ向かった。

冷蔵庫を開けてよく冷えたペリエを開けて一口飲む。

「清四郎も飲む?」

悠理はグリーンのボトルを挙げて清四郎に聞く。

「いや、僕はいいです」

清四郎の返事に悠理はふーん、とだけ答えた。

まだはっきり目が覚めてないのだろう。

ペリエを飲み干した悠理は頭をぽりぽり掻きながら清四郎の隣にちょこんと座った。

「可憐、いなかった?」

悠理は辺りを見回す。

「さぁ…僕が起きたときはいませんでしたけど…」

魅録もいなくなってるところを見ると、ふたりで散歩にでも出掛けたのだろう。

目が覚めた悠理はすくっ、と立ち上がった。

「清四郎、外に出てみよう!」

月明かりを浴びて悠理は実に艶麗に見える。

清四郎は差し伸べられた手を掴んだ。

 

 

外に出るとプールに月が映っていた。

「わ〜 まんまるお月様だー」

悠理はいくつになっても子供のままだ。

月を見て喜び、花を見てはしゃぎ、海を見て戯れる。

清四郎はふっと笑みをこぼした。

「なんかプール気持ちよさそう」

そう言うと悠理は足をプールに入れた。

「うっひゃ〜 気持ちぃ〜」

パシャパシャと水飛沫を上げる。

「こら… 静かにしろ…!」

美童や野梨子が目を覚ましてしまう。

しぃ!と清四郎は声を潜めた。

「だって〜 冷たくて気持ちいいんだもん」

悠理はパチャパチャとつま先で水を遊んだ。

清四郎はデッキチェアに座って楽しそうに水で遊ぶ悠理の後ろ姿を見つめた。

月の光りに透ける茶色い髪。

Tシャツを着ていてもわかる滑らかで張りのある肢体。

そのまま月に連れて行かれるのではないか、と心配になる。

清四郎はそっとデッキチェアから腰を浮かせた。

「なんかプール入りたくなっちゃったなー」

悠理はそう言うと体をプールの方に傾けた。

「だめですよ、そんなパジャマのままで入ったら!」

小さい声で清四郎が止めた。

悠理はムッとした顔で清四郎を睨んだ。

「じゃ、脱げばいいんだろ」

そういうとあっという間にTシャツを脱ぎ捨てた。

「ばか、悠理!」

清四郎が腕を掴む寸前、最後のパンツも脱いでザブンッ!とプールに入ってしまった。

「うわ〜 気持ちいい〜」

月明かりに浮かぶプールの中を全裸で悠理は泳いだ。

「夜中になにやってるんですか…!」

呆れ顔の清四郎は、悠理が脱ぎ捨てたパジャマを拾い上げた。

「…清四郎も入ってよ」

プールの淵に肘を乗せて清四郎を見上げた。

薄茶の瞳に月がきらりと光る。

水に濡れたくちびるが清四郎を誘惑する。

清四郎はふっ、と頬を緩めた。

悠理の誘いに乗った証拠だ。

軽ろやかにTシャツを脱ぐ。

無駄のない均整のとれた肉体。

月明かりに浮かぶ秀麗な姿に悠理は突然恥ずかしくなり、視線を外した。

ザブンッ!

水音といくつもの波紋と水飛沫が悠理の体に押し寄せる。

清四郎が裸になってプールに飛び込んだ、そう思うだけで悠理の胸は高鳴る。

水面が静かになってきたというのに清四郎がそばに来ない。

「あれ…?」

清四郎の気配が感じられない。

「清四郎…?」

悠理がゆっくりと振り返った。

その瞬間、サバーーーッと清四郎が水面から飛び出てきた。

「うわわわわわわ!」

悠理は驚きのあまり大声を出して、引っくり返りそうになった。

清四郎は悠理の腕を掴んで引き寄せる。

「しーっ!静かにしないと美童も野梨子も起きますよ」

人を驚かせておいて騒いだ悠理を静かに注意する。

清四郎は口の端を上げて楽しそうに笑った。

「あいつらにこんな格好でプール入ってるの、ばれたらどうします?」

そう言いながらプールの中で悠理の腰を抱き寄せた。

「だって…」

悠理はくちびるを尖らせて抗議をする。

冷たい水の中でも感じるお互いの体温。

「声を出さないで…」

濡れた黒髪は乱れ、前髪の間から熱い視線を悠理に注ぐ。

「…でも」

清四郎の腕のなかにすっぽりと包まれる。

ふたりの体の周りには冷たい水だけ。

「しー…」

清四郎は鼻が触れるか触れないかくらいに近づく。

「んっ」

悠理の言葉は清四郎のくちびるに塞がれた。

甘くて、優しい、キス。

悠理は自然と清四郎の首に腕を回す。

小さく揺れる悠理の胸が清四郎にぴったりと着く。

「…ぁ」

短く息継ぎをして舌を絡め合う。

蜜のように甘くて柔らかな舌を味わうように。

「悠理… 綺麗ですよ」

少しだけくちびるを離して清四郎が囁く。

悠理は返事のかわりに清四郎のくちびるをはむ。

水さえもふたりの間に入り込むのを拒むようにきつく抱き合った。

それは青く柔らかな水の世界に溶け込んでいくようだ。

悠理は足を絡め、清四郎は悠理のひざを持ち上げる。

「ああ…ん」

清四郎の昂ぶりが悠理の敏感なところに当たる。

冷たい水の中で唯一、清四郎のそれは逞しく、滾っていた

悠理の愛液が水の中で清四郎を誘う。

それはゆっくりと、そして深く、悠理の中に押し入っていく。

「はぁ… んんっ」

清四郎のすべてを包み込むと、甘い痺れが悠理の体を走った。

頭を仰け反らせた悠理の首に清四郎はくちびるを這わせる。

「ああっ…」

悠理は伸び上がり、清四郎の頭を抱えた。

小麦色に日焼けした悠理の肌は、青い月明かりの下では白く見える。

清四郎は日に焼けていない白い乳房を口に含んだ。

「あんっ…」

悠理は体を捩った。

「ああ… 悠理」

清四郎に抱き留められ、悠理は濡れた清四郎の髪をかき乱した。

無重力の水の中、いつも以上に悠理の体はしなやかだ。

清四郎は激しく悠理を突く。

「…悠理 …悠理」

「ぁあ…ん 清四郎…」

ふたりが動くたび、幾重にも広がる波紋。

それはいつしか小波になった。

「ああ… 清四郎…!」

悠理は快楽に声を上げる。

「悠理…、そんなに声を出しちゃ…、だめですよ…」

ゆっくりと激しい旋律を奏でながら清四郎は悠理を制する。

「あん…っ だって…」

声を出させているのは清四郎なのに、悠理は熱を帯びた瞳で

清四郎を恨めしそうに見つめた。

悠理は足を清四郎の腰にもっと絡ませて、密着したところを押しつけた。

清四郎を深く飲み込み、根本まで締め付ける。

「ああ、悠理…っ!」

あまりの気持ちよさに清四郎も声を漏らす。

「声を… 出しちゃ… だめ、なんだろう?」

甘い吐息をはきながら、艶めかしい瞳で清四郎を見つめる。

清四郎は眉をひそめ、月を映した黒い瞳で悠理を見つめ返した。

悠理がひるんだ瞬間、清四郎は左手で悠理の腰を押さえてより一層強く突き上げ、

右手で悠理の頭を抱えて激しくくちびるを貪った。

「!!!」

悠理の頭の先まで電流が流れた。

声を上げたいのに、清四郎の深く激しいキスに塞がれて出せない。

「んんんんんっ!!!」

清四郎の胸を押し返そうとしても体中が痺れて力が入らない。

息ができない。体の中が清四郎でいっぱいになる。

絶頂に達する瞬間、清四郎がくちびるを離した。

「うっ…」

「はぁ…ぁぁぁっ!」

一瞬、プールの水がふたりの熱ですべて蒸発したように感じた。

波打っていた水面は徐々に小さくなり、気だるく抱き合うふたりを優しく包み込んだ。

「大丈夫ですか?」

そっと悠理の髪を撫でる。

「…体が軽いからって、…激しすぎ」

キッと睨んでから悠理はそっと清四郎のくちびるにちゅ、と音を立ててキスをした。

「…悠理、愛してますよ」

清四郎も悠理のくちびるにキスを返す。

「あたいも… 清四郎、大好き」

ポチャンと音を立てて、ふんわりと清四郎に抱きついた。

 

 

清四郎と悠理はビーチタオルにくるまってデッキチェアに寝ころび

心地よい疲労感を楽しんでいた。

目の前のプールは、何事もなかったように月を水面に映している。

「夜中にあたいたちがこんなことしてたなんて知ったら、野梨子怒るだろうな〜」

確か明日もプールで美童と水泳の特訓のはずだ。

「大丈夫ですよ。ちゃんとゴム付けてましたから」

清四郎は悠理の髪にキスをした。

「ったく… いつの間に付けたんだよ」

いつだって用意周到で完璧な恋人を悠理は上目遣いで睨んだ。

「悠理が背中を向けたときですよ」

その恋人は平然とした顔で答える。

「じゃ、なに?ずーっとゴム持ち歩いてたんだ」

半ば呆れている悠理に清四郎はご満悦に頷く。

「いつでもどこでも悠理と愛し合えるようにね」

ゆっくりと清四郎は悠理を組み敷いた。

「もう、ケダモノかよ」

そう言いながらも悠理は清四郎の頬に手を添えた。

「そうさせるのは悠理でしょ」

清四郎はふっ、と笑って悠理にキスをする。

「ん…」

悠理は艶っぽい吐息を吐いた。

ふたりの熱い夜はまだ終わらない。

 

 

 

end

 

 

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