「誘惑、そして陥落」
「ねぇ…清四郎ちゃん」 パソコンに向かっている清四郎の首筋に、後ろから悠理がまとわりつく。 「何ですか?」 パタパタパタ… キーボードを叩く手は休まることがない。
休日の清四郎の部屋。 父に頼まれた学会用の資料のまとめに精を出す清四郎の後ろで、悠理はベッドに寝転び雑誌をめくっていたのだが、暇になったらしい。 …というか、「欲しくなった」のだ。清四郎の男らしい広い背中を眺めているうちに。
「ねぇ…」 甘えた声を出し、清四郎の首筋にちゅっちゅっとキスをする。 清四郎はくすぐったそうに首をすくめ、宥める様に答える。 「もうちょっとで終わりますから、待っていてください」 「いや…」 悠理は清四郎の形のいい耳たぶを甘噛みし、舌を這わせると、片手を下半身に伸ばしてそっと擦った。 普段にない悠理の行動に清四郎は一瞬眉を顰めたが、彼の分身はぐっ、と力を持つ。 「ほら、ここはあたいの相手をしたがってるぞ」 「…仕方ありませんね」
苦笑。 愛しい恋人にそこまでされて、放っておける男はいない。 マウスを動かしてファイルをセーブすると、清四郎は悠理の腰に腕を回してぐっと引き寄せ、膝の上に座らせて唇を合わせた。 うっとりと舌を絡ませてくる悠理をひょい、と抱き上げベッドに運ぶ。 女にしては背の高い自分を軽々と抱き上げてくれる、清四郎のたくましい腕が悠理は大好きだ。 女としての幸せを感じてしまう。
「う……ん」 ベッドに横たえられ、薄いトレーナー越しに胸の突起を口に含まれると、悠理は身悶えた。 清四郎の大きな手が、悠理の身体のラインを辿るように服を押し上げ、脱がせていく。 現れた悠理の素肌には、白い繊細なレースで覆われたブラ。 「…これはまた、ずいぶんかわいいブラですね。どうしたんです?」 「…かあちゃんの、フランス土産」 普段身につけているものと違い、あまりに女らしいデザインが恥ずかしいのか、悠理は腕で覆って隠そうとした。 清四郎は悠理の手をそっと掴んで開く。 「ちゃんと見せてくださいよ。僕に見せたくてつけてくれたんでしょう?珍しく自分から誘ったのもこの為か?」 「違わい…あんま、見んなよ」 本当に恥ずかしいのだろう、悠理は真っ赤になって顔を逸らせている。 そんな悠理がかわいくてかわいくて、清四郎はぎゅっと抱きしめた。
「よく似合っていますよ。ショーツも、お揃いですか?」 「ん……」 「見せてくださいね」 清四郎は器用に悠理のズボンを脱がせた。現れたのは、ごくシンプルな白いシルクのショーツ。 「下は、シンプルなんですね?いや…」 悠理の身体を横に向けさせる。前から見ると何の飾り気もないデザインだったが、バックはブラと同じ繊細なレースのみで覆われる、バックシャンなデザインになっていた。 レースの波の間から悠理の白い引き締まったヒップがちらちらと見えて、なんとも扇情的だ。 「…綺麗ですよ、悠理。素晴らしい」 清四郎の手がゆっくりと悠理のヒップを撫でる。 「やだ…なんか、恥ずかしいよ…」 後ろからまじまじと見られる気恥ずかしさに悠理が身体を捩るが、そんな動きは男の情動をさらに煽るだけ。
かぷ。 清四郎が悠理のヒップを下着ごと咥えた。 「やんっ!」 慌てて仰向けになろうとする悠理の身体を抑え、何度も咥え、キスをしていく。 右手は上に滑らせ、ブラの下から手を差し入れて敏感な突起を摘んだ。 「やん…んっ…んん…」 悠理の手が、シーツをぎゅっと掴む。 「脱がすの、もったいないですね。…着たままで出来るかな?」 「着たまま?」 「こうやって…」 言うが早いか、清四郎は悠理を仰向けに返し、ショーツをぐっと横に引っ張ると、露にした悠理の敏感な部分に口づけた。 「あっ、ああっ!」 舌を這わせられ、悠理が喘ぐ。 「やあっ……」 逃げようとするが、、悠理の足を掴んだ清四郎の大きな手がそれを許しはしない。 快楽の芽を強く吸うと、悠理はあっけなく達した。くたり、と身体が弛緩する。
「もう、イってしまったんですか?早すぎますよ」 いじわるな恋人の囁きにも、悠理は返す言葉がない。 「もう、気が済みました?僕が欲しくはない?」 「……欲しい」 悠理の答えに清四郎はくっくっと笑い、悠理の身体を反転させると腰を抱え上げた。 「やん……」 「自分から欲しがるようないけない人には、この体勢がお似合いですよ」
ずぶり、と悠理のショーツの脇から、清四郎自身が差し込まれた。 「ああっ!あん…あん…」 鼻にかかった声を上げ、悠理は打ち込まれるリズムに合わせて腰を揺らした。 清四郎は片手で悠理の腰を支え、もう片方の手の平で、悠理のヒップを撫で続けた。 「ああ、悠理…素敵ですよ。白いレースが素肌に映えて、とても綺麗だ」 悠理のうなじに吸い付き、赤い痕をいくつも散らし、清四郎は悠理を責めるリズムを早めていく。 「ああ…ん…」 切なげな呻き。首を曲げ、清四郎の表情を伺う悠理の潤んだ瞳に、清四郎の余裕も弾け飛んだ。
「悠理、悠理っ!」 「ああっ!」
ひときわ高く上げた、悠理の嬌声が合図。 のしかかる清四郎の重みと、絶頂後の体の震え。 耐え切れない悠理の腕が崩れ、支えを失った二人の身体が、シーツの波に沈んだ。
「はぁ……」 荒く息を吐く悠理の身体を清四郎は強く抱きしめ、乱れた髪が幾筋も汗で貼り付いている白いうなじに、何度も口づけた。 「うぅん……」 清四郎の身体の下で悠理は仰向けに向きを変え、腕を伸ばして清四郎の頭を抱くと、自分から唇を合わせてくる。 清四郎はその口づけにたっぷりと応えると、軽く微笑んだ。
「全く、どうしたんですか?今日はえらく積極的ですね」 「こういうの、キライ?」 野生動物を思わせるような瞳で問われ、清四郎はくらり、とした。 いつの間に、こんな扇情的な瞳を持つ"女”になったのか。
「…キライな訳ないでしょう?むしろ、大歓迎ですね」 そう応えると、また唇を与える。嬉しそうに目を細めた悠理が、小さな舌を出して彼の唇を舐めた。
―――やれやれ。 清四郎は、首筋に舌を這わせてくる悠理のふわふわとした髪を見下ろしながら、心の中で小さな溜息をつく。
―――僕の方が上位に立っていると思っていたのに、いつの間にか形勢逆転ですかね? いつの間にか、この可愛い野生動物に誘惑され、幻惑され、今やもう、悠理の思うがまま。
けれどそれも悪くはないと、思ってしまうことが、恋への陥落。
清四郎はもう一度幸せそうに溜息をつくと、悠理を深く抱きしめた。
end (2006.4.10 up)
ただ、悠理のお尻をカプってする清四郎が書きたかっただけだったりします。(笑)
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