「僕は雨にも嫉妬する。」
ぴとん、ぴとん… 雨の粒が、窓枠に当たっている。 目を閉じれば、微かにサァーッという雨が地面に降りそそぐ音が聞こえる。
ハァ…… 悠理は溜息をつきながら、窓の外の雨にけぶる景色を見ていた。 窓の外は冷たい。部屋の中は暖かい。 曇る窓を、悠理は手のひらで拭って外を見る。 拭っても、悠理の吐く熱い息で窓はまたすぐに曇る。 それをまた拭う。何度も、何度も……
「…何を、見ているんですか?」 熱い息を吐きながら、清四郎が悠理に問う。 「雨……あっ」 ひときわ強く突かれ、悠理は鳴き声を上げた。
「雨……?」 悠理を揺り動かしながら、清四郎が呟き、悠理の頭越しに手で拭われた窓の外を眺めた。 形の良い唇が一瞬ぎゅ、と結ばれ、すぐに悠理の首筋に強く吸い付いた。 「いっ!」 軽い痛みに、悠理の口から小さな悲鳴が漏れる。
「僕に抱かれている時に、僕以外のものの事を考えないで下さい」 拗ねたように、彼は言う。 「僕以外の事って……雨に嫉妬してんのかよ?」 思わず漏らした小さな笑いは、乳房を強く握り締められて消えた。
「…嫉妬、します」 悠理の瞳を覗き込み、清四郎が言い繋ぐ。
「僕に抱かれているのに、悠理が他の誰かのことを考えていれば、僕はその人に嫉妬する。 悠理が明日着る服の事を考えていれば、僕は服に嫉妬する。 悠理がさっき食べたケーキの事を考えていれば、僕はケーキに嫉妬する。 悠理が雨の事を考えていれば、僕は雨に……嫉妬する」
「……」 言い返そうとした悠理の言葉は、清四郎の深い口づけに阻まれた。 息が、胸が、苦しい。 ―――苦しいぐらいに、清四郎に愛されている。
長い口づけに、くたりと力を失った悠理の身体を抱きしめ、そっと横たえた。 涙で潤んだ大きな瞳を見つめながら、清四郎は囁く。
「僕以外の事など、考えられなくしてやります」 「ああっ……」
激しい愛の行為に、窓の外の雨の音は、悠理の耳には聞こえなくなった。
部屋の窓ガラスが曇っていく。
熱い、熱い、二人の吐息に―――
end
(2005.11.26 )
「世界はそれを〜」の、恋人同士になった後の清四郎&悠理です。
こんな男、実際恋人にしたら無茶苦茶始末が悪そうですね〜。(^_^.)
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