「生徒会室にて」




「あれ?皆は?」
生徒会室に1歩入ってくるなり、悠理はそう問いかけた。
放課後の生徒会室、広いテーブルについているのは清四郎一人。


「野梨子は明日の茶会の準備があるとかで、美童と可憐は相も変わらずデートの約束ですよ。魅録は?」
「ダチの結婚式の二次会だってさ。ふーん、つまんないの」
「…僕と二人きりでは、つまらないですか。心外ですね」
苦笑しながら清四郎が答えた。
「そんなんじゃ、ないけどさ……」
悠理は気まずそうに答えると、お菓子を取りにキッチンの戸棚へと向かった。


「え〜っと、どれにしようかな〜〜♪」
上機嫌で選んでいると、背後で清四郎が椅子から立ち上がる音がした。
ゆっくりと、悠理に近付いてくる気配。
無意識に、身体が震える。
気付かない振りで、わざと大きな音を立てて菓子類をあさる。


「悠理」

ふいに後ろから抱きしめられた。
清四郎の唇が首筋に押し付けられる。
ゆっくりと、舌が首筋を這い、耳朶を含まれた。
「ここで…しませんか?」
「や……」
足が、がくがくと震え始めた。
拒否したいのに、身体が言うことを聞かない。
清四郎に眠っているところを襲われ、男の性を教え込まれてから3ヶ月。
悠理の身体は、彼の愛撫に慣らされてしまった。
彼にじっと見つめられるだけで、欲しくなるくらいに。


清四郎の手が制服の上着の下から入り込み、そっと胸を掴む。
「誰か、来るよ……」
抵抗の言葉は、情けないほどに弱く掠れた声で。
そんな言葉は、男の欲情を煽っているだけだと悠理は思った。
「大丈夫。誰も来やしません」
きっぱりと答える男の前には意味を成さない。


「ああ…」

胸の先端を摘ままれ、押しつぶされる。
清四郎の手が制服のスカートのファスナーに伸びる。
ズッと、ファスナーが下りる音。スカートが床に円を描いた。
ショーツの脇から長い指が入り込み、丹念になぞられる。
溢れ出る、甘い蜜。
くるりと身体の向きを変えられた。
清四郎の、欲望を浮かべた黒い瞳。
与えられる、深い口づけ。
捲り上げられる、制服。剥き出しにされた胸。先端を口に含んで吸われ、悠理は身悶えた。
「ああっ!」


男の動きは性急だ。

ショーツが下ろされ、敏感な芽に愛撫が施される。
「ああ…ああっ……」
戸棚に後ろ手をつき、悠理は必死で崩れ落ちそうな身体を支えた。
見慣れた生徒会室の風景が、一杯に溜まった涙に霞む。


「…なんて表情(かお)するんです?」
いつの間にか、立ち上がった男の顔が目の前にある。
漆黒の髪と瞳。濡れて、赤く色づいた唇。
女の情欲さえそそるような、美しい男―――
頬に手を添えられ、もう一度口づけられた。
いつの間に取り出したのか、清四郎自身がゆっくりと侵入してくる…


「はぁっ」

唇が離れ、悠理は喘いだ。
腰を掴まれ、緩やかに開始される律動。
「ちょっと…動きにくいですね」
熱い息を吐きながら、清四郎が呟いた。
「あっ…」
いっぱいに満ちていたものが引き抜かれ、思わず悲鳴を上げる。
腰を掴んだ清四郎の手でバックの姿勢を取らされ、目の前の戸棚を掴んだ。


「いやあっ!」

この体勢は嫌いだ。
挿入感が深すぎて、おかしくなりそうだから。
清四郎の顔が、見えないから。
「ああ……」
腰を揺り動かしながら、清四郎が喘いだ。
悠理の首筋に、熱い息がかかる。
「もう…溶けそうだ」
「ん、ああっ…」
深く、早まる律動に、悠理は嬌声を上げた。
あつい…熱い…本当に溶けていきそうだ。
「く…悠理!」
清四郎の腕が悠理を抱きしめ、腰が激しく打ち付けられる。
「あっ、あっ、あっ」
徐々に高くなる悠理の嬌声を封じるためか、清四郎の指が悠理の口に差し入れられる。
思わず、その指を強く噛んだ。
清四郎の腕に力が篭る。
折れんばかりに抱きしめられ、深く打ち付けられて、悠理の意識が眩んでいった―――



ぼんやりと、清四郎自身が引き抜かれるのを感じていた。
情交の後始末をしている気配を感じ、悠理はペタン、と床に腰を落とした。
何も身につけていない下半身に、冷たい床の感触。
まだ身体が震えている。何度も絶頂へと追いやられた後の、脱力感。


「大丈夫ですか?」
清四郎が腰を落とし、悠理の顔を覗き込む。
憎らしいほどに、落ち着いた声。
清四郎がふ、と眉を下げ、ハンカチを取り出すと悠理の涙をぬぐった。
次に、悠理の口元を。
それからくっくっと喉の奥で笑いながら、悠理の太股を拭った。


「こんなにぐしょぐしょにして。そんなに気持ちがよかったですか?」
からかうような口調に悠理の眉が上がり、清四郎の手を払いのけた。
「触んなよっ!」
「おや、さっきはもっと触れて欲しそうだったのに」
清四郎は悠理にハンカチを渡し、立ち上がると背を向けてテーブルの方に歩きながら言った。
「早くちゃんと服を着てください。でないと…」
床に座り込んだままの悠理を、振り返る。
「また、抱きたくなります」


ぼんっ、と悠理の顔が火を噴き、手に持っていたハンカチを清四郎に投げつけた。
ハンカチは、ひらひらと二人の間に落ちただけ。
声を上げて笑う清四郎と、真っ赤な顔の悠理。
ただ、身体を繋ぐだけの関係だったとしても、満たされていた。



そのひと月後、清四郎の不用意な一言が、悠理の心を傷つけるまでは―――

 

 

 

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