『その声が聞きたくて』





「んっ……はぁっ…」

ほんの少し掠れた、甘い声。
僕の指に、舌に、そして、僕自身の動きにつれて奏でられる、甘美な音楽。


ぴちゃぴちゃと響く淫靡な水音が、伴奏を添える。
二人の肌の触れ合う音すらも、魅惑的なカノンのようだ。
幾度も繰り返される、二人だけのセッション。
僕は、この共奏に、溺れている―――




*****





あの日、僕はどうかしていたのだろうか。
僕のベッドで眠っている悠理に、欲情を感じた。
それまでは仲の良い友人で、女だとは認識していなかった筈なのに。
ただ、眠る彼女がひどく扇情的に見えたのだ。


無防備に眠る悠理にそっと口づけてみた。
彼女は目覚めない。
もう一度、口づけた。もっと深く。
まだ、目覚めない。
キャミソールの裾から手を差し入れて体のラインをなぞり、肌を露わにさせても、まだ目覚めない。
シンプルなデザインのブラをずらし、白い胸が表れた時―――
僕の理性は、停止した。


決して大きくはないが、魅力的な曲線を描いて盛り上がった乳房。
桜の花が仄開いたかのように、色付いた乳首。
そして、抜けるように白い、肌の色。
まさかこの山猿が、こんなに美しい胸をしているとは思わなかった。
僕は夢中でそれにむしゃぶりつき、思うさまに味わった。
彼女が目を覚ましたら、などと考える余裕もなく。


「んっ……」
突如、悠理の口から発せられた声に我が耳を疑った。
甘く、かわいらしい声。
普段の、乱暴に投げつけるようなしゃべり方からは想像もつかなかった。
初めて聞いた悠理の、女の声。


もう一度その声が聞きたくて、そっと乳首を吸い上げた。
「……あん…」
舌の先で、揺らす。

「んん……」
もっと感じさせたくて、喘ぐ声が聞きたくて。
僕は悠理の下腹部に手を伸ばし、指で刺激した。
既にねっとりと濡れているところを、ゆっくりと擦り上げる。
何度も、何度も往復させ、溢れ出てくる蜜を掬っては塗りつけた。


「う……ん」

甘い吐息をつき、悠理がうっすらと目を開けた。
「はぁ…ん……何…してる、の…せいしろ?」
ぼんやりと、僕に問いかけると、視線が辺りを彷徨う。
そこで、やめることも出来たはず。
だが僕は、見せ付けるように悠理の胸を舐め上げてやった。
「やぁ…」
男の欲望を煽るような声が聞こえた。



目を覚ましても、悠理は抵抗しなかった。
おそらくは、意識がはっきりしなかった所為だったのだろう。
潤みきった悠理は、初めてだったにもかかわらず、すんなりと僕を受け入れた。
狭い彼女の胎内で、僕は他の女を抱いた時とは全く違う、頭の芯が痺れるような快感に我を忘れた。
悠理の身体を気遣う余裕もなく、ただ己の欲望のままに動き回った。
ただ、激しく突き動かす僕の腕の中で、悠理が何度も絶頂を迎えるのが嬉しかった。




*****





事が終わった後、当然悠理は怒り狂うだろうと思っていた。
よく眠っていて、目覚めても意識のはっきりしないままに、犯されたのだから。
なのに…彼女は今も、僕の下で細く声を上げ続けている。
「せい、しろ…」
舌足らずな声で僕の名を呼び、華奢な腕を首に絡めてくる。
快楽の為に潤んだ瞳で、僕を見上げる。


僕が求めれば、彼女はいつでも身体を開く。
お互いの部屋でも、誰もいなければ、部室でさえ…


何故?

ここに、愛はないのに。
僕達は、ただの友人に過ぎないのに。


「悠理は何故、僕に抱かれるのですか?」
その問いに、いつも彼女は薄く笑うだけで答えはしない。




あなたは僕に、聞かないのですね。
「お前は何故、あたいを抱くんだ?」と。

 

もしも、そう聞かれたら―――



「その声が、聞きたいから」



そう答えてあげますよ。




end


(2005.9.12)





痛てっ!なんか飛んできた。

皆さん、私に怒りをぶつけないように。悪いのは清四郎なんですからぁ!
こういう奴は、一度痛い目にあわせないといけませんねぇ。でないと悠理たん、報われないです。(自分で書いといて…)

黒背景部屋作品にしては、エロ度低め。表でも良かったかな?(←麻痺してます?)



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Material By Four seasonsさま