『その顔が見たいから…』





「んっ……はぁっ…」

肌を滑るあいつの手と唇に、あたいはたまらず声を上げた。


あいつの舌が、あたいの最も感じるところを責める。
ぴちゃ…ぴちゃ…
静かな部屋に響く、淫らな水音。
あたいの上げる…嬌声。


くやしい…
あたいはいつだってぐちゃぐちゃなのに、あいつはいつだって涼しい顔をしている。
今だって……あたいの乱れるさまを冷静に観察でもしてるみたいだ。
冷静な、観察者の顔。
本当に観察目的なのかも知んない。



だって、ここに愛はないから。
だって、あたいとあいつはただの友人に過ぎないから。
あいつは、ただ「したいから」あたいを抱くだけ。




―――だけど、あたいは知ってる。
いつもは鉄壁のあいつの表情が、イク時だけは情熱を孕むのを。


その瞬間、苦しげに眉が顰められ、唇が酸素を求めて開き、黒い瞳が潤む。
「…くっ…ああ……」
終始無言か、あたいをいたぶるような言葉しか吐かない口が、快楽の声を上げる。
その瞬間のあいつのカオが見たくて…
あいつの上げる声が聞きたくて…
あたいはあいつに抱かれているのかもしれない。



ああ…あのカオが見たい。



そう思うあたいを嘲笑うかのように、あいつはあたいの身体をうつ伏せにし、腰を抱え上げた。
「や、やだっ!」
逃げようとするあたいを押さえつけ、胎内に浸入してくる熱い、熱い昂ぶり。



「あっ、あああああっ!」
堪らず、漏らした声は悲鳴に近い。
屈辱的な格好で、犯されるかのように貫かれて。
涙が零れた。


後ろから覆いかぶさったあいつが、あたいの耳元で息を吐く。
「何故…泣いているのです…?」
あいつの舌が涙を舐め取る。
「や…やだ……あっ、おまえの…カオが見たいっ!見せて……ああっ」


緩やかに擦り付けられていた腰の動きが止まり、あいつ自身があたいの中から引き抜かれた。
身体の向きを変えられ、抱きしめられる。
長い指で弄られた後に、また、あいつが入ってくる。


「うん……あっ、あっ、ふぅ…」
揺すぶられながら、目の前のあいつの顔を眺める。
少し眼が細められてるけれど、まだ冷静なカオ。
ちろり、とあいつの舌が形のよい薄い唇をなぞった。
そして、はぁ……と、吐息が漏れた。
ああ…もうすぐ、もうすぐあの顔が見られる。



「くぅっ…はぁ……」
ああ…あたいの好きなカオだ。
快感が深かったのか瞳が閉じられ、大きく息を一度、二度と吐き出している。
あいつの腰がびくん、びくんと痙攣する。
ぐっ、ともう一度強く腰が押し付けられ、あたいの目の前がハレーションを起こした。


「あっ、んんっ!」


あたいの内部があいつを離すまいときつく収縮し、やがてゆっくりと力が抜けていった……





*****






ゆっくりと、あいつの大きな手があたいの髪を撫でている。
あたいはあいつの腕を枕にして、うとうととまどろむ。


「悠理は、何故僕に抱かれるのですか?」
不意に、まだ少し荒い息を吐きながら、あいつが聞いた。



―――お前のイク顔が見たいから…



そう言ってやったら、どんなカオをするのかな?




end


(2005.9.10 加筆修正)


       


『2 BECOME 1』シリーズの2作目ですが、書いたのはこちらが先。
青蘭さまのサイトに、いきなり「エロ送りつけていいですか?」と、送ったもの。(←失礼)
悠理視点でエロ書いたのは初めてでしたね。悠理に語らせると、なんか切なくなっちゃうなぁ。

余談ですが、青蘭様のところでは「作者不詳」でアップしてもらったのですが、ポ姉とフロ氏にはすぐに私だとバレました。その理由が、ポ姉「あえぎ声」フロ氏「清四郎のイク顔が見たいという嗜好の一致」であったことに笑いました。(笑)





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