ふたりの策略

By にゃんこビールさま

 

 

 

 

清四郎と悠理が付き合いだしてすでに2ヶ月。
仲間にはないしょにしている。

清四郎としては正々堂々と公表したいところなのだが、

悠理は仲間に気を遣わせたくないだの、なんだのと理由をつけてふたりの関係を伏せている。
半分以上は照れもあるのだが。



11月、銀杏の葉が色づく頃、聖プレジデントの文化祭が無事終わった。
生徒会として(また留年しなければ)最後の仕事を終え、剣菱邸で打ち上げ大宴会が催された。
日付も変わろうとしている時間、すでに床にはビールの空き缶や
ワインや日本酒の空瓶も転がっている。
全員ご機嫌、ほろ酔い気分である。

「ねぇ〜 さっきから、すっごーく気になってるんだけど〜」

可憐は酔いが回っているのか、口調がゆったりになっている。

「最近、タマとフクってやけに清四郎とじゃれてない?」

ソファに座ってワインを飲んでいる清四郎の肩にはタマ、
膝にはフクがちゃっかりと乗っかってる。
「そういえば… 今までにない光景ですわね」

めずらしく冷酒を頂いてる野梨子は、少し目が据わり気味に清四郎を見つめる。

「いつもフクなんて僕のところにくるのに。」

ちびちびとワインを飲み、さすがの美童もネコにまで嫉妬する。

「タマだって私か可憐の膝に乗りますわよ。」

みんなに指摘されてもタマもフクも知らん顔を決めている。

さすがの悠理も焦った。
「ほら、可憐たち床に座ってるし。あいつらソファーが好きだから!」

「俺もソファーに座ってるぜ」

清四郎と同じく1人用のソファに座っている魅録から醒めたご意見。

「お、お前たち、酒臭いからだよ!」

「僕もそうとう酔ってますけど」

誤魔化そうとしている悠理に助け船どころか追い打ちをかけた清四郎は、
にっこり悠々とフクをなでている。
「ぐっ…」
なんだか愛する恋人にまで見放された気分である。

可憐はよつんばいのまま、清四郎のところに寄っていった。

「…ちょっと、フクってば私があげた香水の香りがするわよ。」

フクはあら、気が付いた?的にちらりと視線を可憐に投げた。

「フク、ちょっといらっしゃいな」

野梨子に呼ばれてフクは素直にとん、と清四郎の膝から下りた。

寄ってきたフクを野梨子は抱っこした。

「あら?この香り、たまに清四郎からも香りますわよ。」

「へー、可憐は清四郎にもあげたの?」

美童も野梨子に抱っこされたフクに近づいた。

「まっさかー!だってHappy Heartよ。清四郎にだったらMen'sにするわよ。」
悠理は冷や汗が出てきた。
可憐からもらった香水は清四郎とデートするときにしか付けないのだ。

「そ、そーだ!きっとフクがつけたんだ!」

「あんた、どこのネコが自分で香水つけるのよ!」

可憐にビシッと指摘されて悠理はぐうの音も出ない。

「それにタマもいつも遊びに来ると魅録にじゃれついてたのに…」

美童は野梨子から変わってフクを抱っこした。

「いきなり清四郎の足下に走り寄ってったなー」

魅録はちらりとタマを見た。
タマは聞く耳もたず、清四郎の肩から下りようともしない。

「清四郎が犬や猫とじゃれるなんて考えられませんわ。」

「失礼な。僕だって動物は好きですよ。」

一応、反論しているが清四郎はにこにこと肩にいるタマのアゴを指でなでている。

「好きだよねぇ〜 悠理のことペット扱いしてるじゃん。」

「言えてるな。」
美童の意見に魅録も頷いた。
「そんなことないぞ!清四郎だってあたいのこと女の子扱いしてくれるんだから!」
はっと口を手で押さえたが時すでに遅し。

「なーに?清四郎が女の子扱いですって?」

「あら、わたくしたちの前ではそんな素振り見たことありませんわ。」

可憐と野梨子から矢継ぎ早な質問。

悠理は自分の失言とはいえ、口を押さえたまま顔が真っ赤である。

「それに悠理の移り香なんてなかなか風流じゃない?清四郎」

美童にそう言われて清四郎はまんざらでもない様子。

「ま、そろそろ年貢の納め時じゃねぇーか、悠理」

魅録は固まっている悠理の背中をポンポンと叩いた。

「そーよ。いつまでも私たちに隠し通せるわけないでしょ。」

「みんなにばれてしまったのなら仕方ありませんね。」

清四郎は肩を上げて降参のポーズを取り、タマは肩から下りた。

「もー!何だよーっ!」
片割れが降伏したのなら悠理も肯定せざるを得ない。

「さ、飲み直しですわね。」
「僕、シャンパンとおつまみもらってくる!」

野梨子と美童が立ち上がり、部屋から出て行ったと同時に
タマとフクもすかさず部屋の外に出て行った。
魅録はそんな2匹の後を目で追っていた。

「…あいつら、わざとだな。」

「え?何か言った?」
「いや、何も。」
彼らの身を守るために首を横に振った。

魅録は2匹が出て行ったドアに向かいグラスを掲げ、ウインクした。

ご主人想いのタマとフクの功績をたたえて。






おしまい♪







またもやにゃんこビールさまからいただいちゃいました♪
「ケンカの被害にあったり、いちゃいちゃを見せつけられたり…そんなタマフク仕返し編(笑)です。うすうす2人の仲に気が付いてる仲間たちにきっかけを作ったタマフク。
きっと清四郎から「でかした!」と鮪でももらえるかもよ。魅録もペットを飼ってるだけあってタマフクの行動はバレバレですが。」

 

私もタマフクに「でかした!」と言ってあげよう。(笑)






「猫話のお部屋」

Material By ねこちぐらさま