「ミャウリンガル」
By にゃんこビールさま
〜♪♪〜♪ 清四郎の携帯からホール・ニュー・ワールドのメロディ。 大切な恋人・悠理からのメール着信だ。 ウキウキっと受信メールを開くと <これから家にきて> と、これだけ。 いつも悠理からのメールは用件のみ。 「もっと艶っぽいことでも書けないんですかねぇ…」 といいつつ、清四郎の目はデレデレ。 先にお風呂済ませておいてよかった、などあらぬことを考えつつ清四郎は早々に支度をして、愛しい悠理のもとへ向かった。
部屋のドアをノックすると悠理が笑顔で出迎えてくれた。 「清四郎、早かったじゃん!こっちこっち!」 悠理は清四郎の手を引っ張って部屋に招き入れた。 「どうしたんですか?こんな夜遅くに。」 心とは裏腹なことを口走りながら清四郎の顔はすでに緩みっぱなし。 「清四郎に見せたいものがあるんだ!」 清四郎がソファに座るとどこからかタマとフクが膝の上に乗ってきた。 「じゃーん♪」 仰々しく悠理は清四郎の目の前につきだした。 ひょうたん型に三角の突起物が2つ付いている。 「……ミャウリンガル?」 「そー!今日ね、美童がくれたんだよ。」 美童がネコ好きな女の子を堕とそうと買ったのだが、どうやら空振りに終わった(らしい)。 となるとネコも飼っていない美童にミャウリンガルは用がない。 そこで悠理にくれたのだ。
「タマとフクが何言ってるか知りたくない?」 嬉々としてる悠理とは反対に特別興味がない清四郎。 タマとフクにしたら自分たちの言ってることが明らかにされるのは迷惑な話である。 「悠理だったらタマとフクの言いたいことくらいわかるでしょう?」 「うーん。だけど清四郎といっしょに聞いてみたかったんだもん。」 (清四郎といっしょに)なんて言われて清四郎も嫌とは言えない。 「うまくタマとフクの声が拾えますかねぇ…」 そういうと清四郎はタマを抱き上げた。 「タマ、今の気持ち、言ってみて!」 悠理と清四郎に見つめられ、目の前にヘンテコな機械を突き出されたタマは 仕方なく一声鳴いてみた。 「にゃう」(めんどうくさいなぁ) <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『遊びたいにゃ〜』 「タマ、そっかお前は遊びたいのかぁ!」 「ほう、なかなかおもしろいですな。」 ミャウリンガルの分析に悠理は大喜び。清四郎も興味が湧いてきた様子。 近からずも遠からずの分析に鳴いたタマも驚いた。 「よし、次はフクだ!フク、しゃべってみて!」 フクも仕方なくふたりに付き合って一声鳴いてみた。 「にゃぁ」(いつまで付き合うのかしら) <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『眠いにゃ〜』 ちょっと違うけどちょっとそうかも、とフクも少し驚いた。 「そうかー、フクは眠いんだ!」 「そうでしたか、眠いところに遊びにきてすみませんね。」 清四郎はフクの首をゴロゴロしてあげた。 「あ!本当にフク寝ちゃいそうじゃん!」 清四郎にゴロゴロされて気持ちいいところなのに悠理がそばでお構いなしでうるさい。 むっとしてフクが一鳴き。 「にゃー」 すかさず悠理はミャウリンガルを差し出した。 <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『うるさいにゃ〜』 「あはははははは!おもしろい、うるさいにゃ〜だって!」 もう悠理は足をばたつかせて大喜びである。 う〜ん、これは当たってるかも…とフクも今度は関心した。 「まぁ、本当にネコの声を分析しているわけではないでしょうが、なんだか当たってるみたいですね。」 清四郎もミャウリンガルを見た。 「えーっ ネコの声を翻訳してるんじゃないの?」 どうやら悠理は本当にネコの言葉を通訳してくれると信じていたらしい。 「ただ音声を拾っていくつかのパターンに当てはめてるんでしょうね。」 「なんだ… つまんないの。」 悠理はちょっとがっかりしてほっぺを膨らませた。 「もしかして悠理が鳴き真似しても反応するかもしれませんよ。」 清四郎の言葉にぱっと悠理の顔が明るくなった。 「ホント?んじゃやってみよ!」 ゴホンとのどの調子を整え、清四郎が差し出したミャウリンガルに向かって鳴いてみた。 「にゃあにゃあ」 <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『おなかが空いたにゃ〜』 「きゃはははははははは!当たってる!」 悠理はお腹を抱えて大笑いである。 タマもフクも悠理の方が正解率が高いことに驚いた。 「ふむ…おもちゃとはいえ侮れませんな。」 清四郎はミャウリンガルをまじまじとながめた。 「次は清四郎だよ。」 悠理は笑いすぎで涙を流しながら清四郎からミャウリンガルを奪い取った。 「えっ!」 思いも寄らない展開に清四郎は言葉を失った。 「だってタマもフクもあたいもやったんだから清四郎もやってよ。」 「ぼ…僕はいいですよ。」 悠理とタマとフクに迫られて清四郎は後ずさりした。 「ねーねー、ちょっとネコの鳴き真似してみて!」 キラキラした悠理とタマとフクの目に見つめられてやらない訳にはいかない。 清四郎はおずおずと悠理が持つミャウリンガルに向かって鳴いた。 「にゃーにゃー」 <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『大好きだにゃ〜』 「えっ、清四郎こんなこと言ったの?」 ぽっと悠理は頬をピンクに染めた。 (お、すごいじゃないですか) 清四郎とタマとフクはミャウリンガルの画面をのぞいて関心した。 再度、清四郎は鳴いてみた。 「にゃう〜」 <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『キスしたいにゃ〜』 「………」 無言の悠理の顔は真っ赤。 「なかなか正確ですね。」 清四郎はにっこり。 きっとこのあとはミャウリンガルをネコに使わずふたりでいちゃいちゃするのだろう。 結局いつもこんな展開なのである。 一応、ミャウリンガルの義理立てをしたタマとフクはそそくさと部屋を後にした。 去り際にタマが一声「…にゃ〜」 <解析中>と表示され、ピッと解析結果が表示された。 『付き合いきれないにゃ〜』 タマとフクの気持ちを的確に分析したようだ。
おしまい♪
にゃんこビールさまから、猫部屋創設祝いにいただいてしまいました♪ 「何年か前にバウリンガルに対抗して売り出されたミャウリンガル。悠理なら喜んで使うような気がして。」ということで、書いていただきました。 「にゃーにゃー」と鳴く清四郎に爆笑!本当に、悠理のお願いは断れないんですね〜。
「猫話のお部屋」
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