「正しい解熱のススメ」
「大丈夫ですか?」 始業前の生徒会室では清四郎の肩に頭を預けた悠理がうんうん唸っていた。 「やっぱりインフルエンザかしら。やぁね〜、どっから貰ってきたのよ、うつさないでよ」 心配しているのかいないのか、可憐は悠理から体温計を受け取るとその表示された数字を見て言った。 「何度でした?」 悠理の肩から腕を摩ってやりながら、清四郎が尋ねる。 「8度9分。でも、まだこれから上がるんじゃないのぉ」 可憐は脅すように悠理に言うと、うつされない様にと、その場から離れた。 「それにしてもよっぽど辛いもんなんだな。俺たちがいても、そうやって清四郎に凭れかかるなんてさ」 「そうですわよね。ふたりがお付き合いしてる事なんてみんな十分過ぎるぐらい知ってますのに、普段は意地張って変に余所余所しくしたりしていますものね」 「やっぱりさぁ、いくら悠理でも偶に弱ると本音が出ちゃうんだろうね〜」 皆はやはり心配と言うよりは、めったにないこの状況をただ愉しんでいるようだった。 「お前等なぁ〜。ごちゃごちゃうるさいんだよ〜」 悠理も力ない声で反論するのだが、喋るだけでも熱の所為で身体が痛むようである。 「大体なんで、そんなんになってんのに学校に来たのよ」 呆れたような可憐に清四郎が答えた。 「今朝はいつも通り元気だったんですけどねぇ。車の中で急に気分が悪いと言い始めて、そしたらあっという間に熱が出てきてしまったんですよ。・・・やっぱりあの時引き帰せば良かったですよ」 「ヤダって言ってんだろ・・」 清四郎の言葉に悠理が小さく睨んだ。 だがその様子を見て美童はニヤリと笑った。 「今朝はって。ふ〜ん、清四郎、今日は悠理ん家から来たんだぁ」 「最近はいつもそうですのよ。まだ、結婚をしたわけでもないですのに。はしたないったらありませんわ」 「やぁね〜野梨子ったら。いいじゃなぁい、愛し合ってんだから〜」 眉間に皺を寄せる野梨子を可憐が横から楽しそうに叩いて言った。
「お〜ま〜え〜ら〜・・。ホンット、いい加減にしろよ〜」 本人は必死に反論しているつもりなのだが、その声は傍にいた清四郎にしか聞こえないぐらい小さいものだった。 4人は相変わらずきゃいきゃい人をネタに勝手に盛りあがっている。 「せーしろぉ、あいつら何とかしてくれ・・・うるさい・・・」 「なら、もう帰りましょう。そんな身体じゃ、授業なんて無理でしょ」 「ヤダ・・・今日はここですき焼きしようと思って材料持って来てんのお前も知ってんだろ・・」 「そんな身体でも食欲だけは衰えないんですね」 「あたいから食欲取ったら何が残んだよ」 「僕への愛があるじゃないですか」 「・・・・う〜・・・寒い〜・・幻聴まで聞こえ出した〜・・」 ぐったりしていてもそういう所は素直でないその答えに些かむっとしながらも、仕方ないとばかりに悠理を抱えあげた。 「そろそろ限界みたいなので、保健室に連れて行ってきますよ。どうしても昼はここですき焼きをしたいそうですから」 「すき焼き!お前そんな身体でそんなもん食う気かよ!!」 「食べないんなら、お前の分、あたいが貰うからな〜」 「それだけ食欲があれば大丈夫ですわね」 横抱きに抱えれられた悠理は野梨子に「鍋の用意しとけよ〜」とか細い声で言うと、力尽きたのか清四郎の胸に顔を埋めた。 「魅録、申し訳ないですけど悠理は今日欠席すると担任の先生に伝えておいてください。昼までいたとしても授業は無理でしょうからね」 「あぁ、わかった。お前はどうすんだよ」 「僕は暫くついていますよ。午後からは出るつもりですが」 清四郎はそう言うと、保健室に向った。
「そうか、忘れてた・・・」 清四郎は保健室の前で、そのドアにかかっている札を見て立ち尽くした。 札には「出張の為留守にします」と書かれてある。 昨日から保健医が出張に出ていた事は全校生徒に知らされてあったのだ。 ほとんど保健室を利用する事などなかったので、そんな事すっかり忘れてしまっていた。 「ま、どっちでもイイですけどね」 とりあえず、きちんと休ませる事さえできれば自分がいるのだし、清四郎にすれば特に保健医は必要なかった。 足でドアを開け、悠理をベッドに横たえる。 先程まで、なんとか喋れていた悠理は今は呼吸も苦しげであった。 さすがに薬品棚には鍵がしてあったが、ただの風邪かインフルエンザかわからない今の状況ではどうせ薬も飲ませる事は出来なかった。 冷蔵庫の傍にあった氷嚢を手に冷凍庫から氷を入れる。 水をたっぷり入れ、封をすると、タオルを巻きつけ、悠理の頭の下に置いた。 そしてブラウスの襟元のボタンとスカートのホックを外し、身体を楽にしてやる。 もう一枚タオルを取りだし、汗を拭ってやった。 「せぇしろぉ・・・」 「どうしました?」 「身体・・痛い・・・」 「熱が・・・あるんですからね・・・・」 涙目で見つめてくる悠理に、こんな時だと言うのに色香を感じてしまった。 熱い息を吐くその唇が開き、紅い舌の先が見えると、清四郎の身体は一気に熱くなり、思わず喉を鳴らした。 (な、何を考えているんだ、僕は・・。悠理は熱があるんだぞ) 「せ・・しろ・・・」 だが、もう清四郎の眼には悠理が自分を誘っているようにしか見えなくなっていた。
清四郎は壁にかかる時計を見た。授業が終るまで残り50分。 瞬時に色々なコトを計算すると、悠理の肩までかかるフトンを剥ぎ取った。 「なに・・・すんだよ・・・」 突然の事に身を縮める悠理の体を開き、自らもベッドに上がり口づけた。 「や、ヤダ、清四郎」 唇を離し、身をよじる。 「熱を下げようと思ったら汗を掻くのが一番なんですよ」 清四郎は尤らしい理由を口にすると、悠理の首の下に腕を差し入れ口付けながら反対の手で制服を脱がせていった。 「清四郎、寒い」 「すぐに熱くなりますよ、いつもの様にね」 口付け舌を挿し入れた悠理の口腔内は、いつもよりもかなり熱かった。絡めてくるはずのその舌もさすがに反応が鈍い。 だが、渇いていた喉を潤すかのように交じり合う唾液の全ては悠理が呑み込んだ。 唇を離し、首筋から露になった胸元へと滑らせる。 「せぇしろぉ・・・身体・・・痛いんだってば・・・」 「僕がその痛み、忘れさせてあげますよ」 瞳から零れる涙を唇で掬うと、優しく胸に手を添え撫でるように摩る。 「んっ・・・いたっ・・・」 その刺激すら今は痛みを伴うようである。 清四郎は反対の頂きを舌で弄びながら、それでも胸を撫で続けた。 「痛いだけじゃないと思うんですけど?」 「んはぁっ・・・変な・・・事・・・・言うな・・よ・・・」 決して痛がっているだけではない事を知っている清四郎は素直じゃない恋人の言葉に満足そうに口端を上げると、その手を身体の中心に滑らせていった。 「やぁっ・・・せ・・しろ・・も・・やめ・・・」 「やめていいんですか?」 苦しげに顔を歪める悠理に清四郎は胸の先から顔を離し意地の悪い笑みを浮かべ聞き返した。 悠理のじっとり濡れたその場所へ躊躇なく指を挿し入れる。 「あぁっ・・・・」 身体の痛みで腰を浮かせる事も辛そうだった。 感じているのに、思うように動けないというもどかしさの為なのか、眉をひそめ、唇を噛み締めている。 「この中も随分熱いですね」 清四郎はそう呟くと、動かしかけた指を引きぬいた。 「ぁ・・ん・・」 「ちょっと待っててくださいね」 清四郎は冷蔵庫まで近づくと冷凍の扉を開けごそごそと音をさせた。
「せ・・・しろ・・・?」 微笑を称え戻ってきた清四郎に悠理は嫌な予感がした。 「あ、あたい・・もう、熱下がった気がする・・・。だから・・・」 本当はまだまだ身体のあちこちが痛かったのだが、清四郎のその表情にこれ以上続けるとろくな事がない気がしたのだった。 清四郎は悠理のそんな言葉を遮るように、口付けた。 「んっ!!」 悠理の身体に冷気が走る。 清四郎は口に氷を含ませ戻ってきたのだった。 口から口へ氷が滑る。 舌を使い悠理の口腔内を冷やすと、その氷を掬い上げ首筋に滑らせた。 「ひゃぁ・・・・ん・・・」 氷を咥え首筋から、両胸の頂き、臍、そして、熱いその場所へと辿らせる。 「あっという間に氷が溶けていきますよ」 清四郎は一度その氷を悠理の腹に落とすと、その大きさを見て微笑んだ。 「せ・・・しろぉ・・」 「今、中から冷やしてあげますからね」 清四郎は小さくなりつつあったその氷をまた咥えると悠理の一番熱くなっているところへ舌を使って押しいれた。 「やぁっ・・・・」 「どうですか、気持ちイイですか?」 悠理はそれに答えず、清四郎の手を必死に掴んだ。 膝は熱の為か快感の為かうまく力が入らないようで、脚がシーツの上を滑っている。 清四郎はそこに唇をつけ、溢れる液体を舐め取った。 「いやぁっ・・・せぇしろぉ・・・ん・・・」 「熱があると感じやすくなるんですかね。溶けた氷だけではなさそうですよ」 清四郎は一旦身体を起こすと悠理に口付け、いつも以上に潤っているその場所に、一気に自分自身を埋め込んだ。 「あっん・・」 「っく・・・氷・・・、やっぱり・・すぐ溶けてしまっ・・・た、みたい・・ですね」 中は最初指を挿し入れた時と同じぐらい熱かった。 熱い身体を抱きしめ、ゆっくり腰を動かす。 「やっ、せぇ・・しろ・・」 清四郎の首に腕を廻そうとするのだが、力が入らないのか滑り落ちていく。 「悠理・・・もうすぐ楽になりますよ・・・」 悠理の、汗で張りついた髪を掻き揚げその額に口付ける。 ベッドの軋む音と悠理の荒い呼吸を聞きながら、清四郎はいたるところに口付けていった。
「―――せ、しろ・・も、あたい・・・んっ・・だ・・め・・」 「僕も・・限界ですよ」 清四郎は悠理の言葉に動きを早めた。 「やっ・・・あぁっ・・・・・あっ・・・・」 「・・・悠理!!」 ベッドの軋む音が止み、ふたりの荒い息遣いだけが残った。 「はぁ・・はぁ・・・まだ・・・痛みますか・・・」 清四郎は身体を起こすと、肩で息をつきながら氷嚢を包んでいたタオルで悠理の身体の汗を拭いてやった。 「よく・・・わかんない・・・」 完全に力の抜けているその身体を抱き起こし、背中の汗も拭う。 「これだけ、汗を掻きましたからね。もしかすると、熱も下がり始めてるかもしれませんね」 悠理の全身を拭き終わると、また横たえ、自らの身体の汗も拭き取った。
「入るわよ〜」 一限目終了のチャイムが鳴って暫くした頃、可憐のどこか楽しげな声が聞こえた。 「どうぞ」 清四郎は静かに答えると、寝息を立てる悠理から離れた。 「悠理は?」 他の四人も様子を伺うように、膨らみのあるベッドを覗きこんだ。 「寝てますよ。なんとか熱も下がってきたようですしね」 「薬を飲ませましたの?」 「えぇ、まぁ」 清四郎は曖昧に頷くと、悠理の元に戻った。 その後ろから四人もついてくる。 「顔色もさっきより、だいぶ良いね」 「こりゃホントに昼飯にすき焼きしそうだな」 「楽しみにしてましたからねぇ」 清四郎は困ったように笑うと、愛しい寝顔を見つめた。
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