「愛を抱きしめて」 side−Y



あったかい…
ぽわん、ぽわんて、身体が浮いてる感じ。
ここはどこ?
あたいはゆらゆらとたゆたう水の中にいるみたいだ。
目を開けると、そこは光に満ちた薄桃色の世界。
「悠理……」
どこかで声がした。
あたいの大好きな、低くて深みのある声。

清四郎の、声。


 

「清四郎、どこ?」
あたいは彼の姿を求めてゆっくりと泳ぎだす。

すーい、すーいと滑るように進んでいく。

「悠理、おいで」
また声が聞こえた。
いた。見つけた。
あたいに向かって、大きく手を広げている清四郎。

すーーいと大きく水を掻いて、あたいは清四郎の胸に飛び込んだ。

「清四郎、見ーつけた!」
ぎゅ、と抱きつく。ぎゅ、と抱きしめられる。

見上げたら、穏やかで優しい瞳がそこにあった。

なんともいえない安心感。
こみ上げる、うっとりするほどの幸福感。

あたいは清四郎のたくましい胸に頬を摺り寄せ、目を閉じる―――




ふと目を開けると、朝の眩しい光が一杯だった。
「目が覚めましたか?おはよう、悠理」

夢の中で聞いたのと同じ、優しい声。

清四郎の、声。
夢の中で感じたのと同じ温かさ。

あたいは、清四郎の腕の中。
すり。夢の中でもしたように、清四郎の胸に頬を摺り寄せる。

ぎゅ。同じように抱きしめられる。

心地よさに目を細め、あたいは再びうっとりと目を閉じる。



 

ここが、あたいの居場所。あたいのいるべきところ。

あたいも清四郎を、あたいの愛を、抱きしめる。



「おはよう、清四郎」


 



イラスト By あきさま




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