「風邪をひいた時には…2」





風邪の季節である。
そしてここにも風邪による諸症状、咳、鼻水に苦しむ人が約一名……


「ぶぇっくしゅ!ぶえっくしゅ!ご、ごほっごほっ」
「…ひどいですな」
「ぶ…ぜーじろー、ディッシュどって…」
「ほら」
「あんがど。ぶーーっ!」


清四郎が渡したティッシュを2〜3枚重ね、悠理は思いっきり鼻をかんだ。
一度ではかみ足りないのか、2度3度と。

「…すっきりしましたか?」
「らめ。がんでもがんでも出て来る。ぶーーっ!」
「はぁ……」

清四郎は、溜息を吐いた。
土曜日とあって、悠理と清四郎は清四郎の部屋で新作映画のDVDを楽しんでいた。
お揃いのパジャマ姿でソファに座り、手にはホットココア。二人で甘い夜を楽しむはずであったのに、このありさまである。



「今日は、早く寝たほうが良さそうですね」

清四郎はリモコンを手に取ると、DVDを止めた。
「でもその調子じゃあ、息が出来なくて寝苦しいでしょうね…」
「うん…ごほっ、ごほっ」
「そうだ、ちょっと待っててください」
清四郎は階下に下りて行ったかと思うと、すぐに何かを手にして戻ってきた。


「悠理、これを塗ってあげますよ」
と、青い容器を掲げて見せる。それは―――


『ヴイ@クス ヴェ@ラップ』


「ふえ?何それ、懐かしー」

「おや?悠理も塗ってもらったことあります?」
「うん。ガキの時、風邪ひくといつも母ちゃんが塗ってくれた。でも、それって子供用なんじゃないの?」

「とんでもない。子供から高齢者の方まで、幅広い世代で使えるんですよ。うちの親父なんか薬嫌いなので、風邪ひいた時はいつもコレです」
「ふーん、おっちゃんも使ってるんなら、確かだよな!」
悠理は、恋人を信頼しきった瞳で見上げた。


「ええ。じゃあ、塗ってあげますからベッドに横になってください」
「うんっ!」


悠理は言われるままにどん、とベッドに飛び乗ると大の字になって寝転んだ。
ぎし。清四郎が横に片膝をつき、悠理のパジャマのボタンを外していく。
全部外し終えると、清四郎は薬をたっぷりと指先に取り、悠理の胸に塗っていった。


まずは、ゆっくりと胸の中心に円を描くように、塗りこんでいく。
時折指先が胸の先端をかすめ(←もちろんわざと)、「あ…ふぅん」と悠理が気持ち良さそうな声を上げた。
清四郎は満足気に微笑むと、もう一度薬を指先に取り、今度は胸の谷間から首筋へと優しく手の平を往復させる。
暖かい手の感触と薬の香気に、悠理はうっとりと目を閉じて喘いだ。


「あん、ああん…清四郎…」

「気持ち、いいですか?悠理」
「うん……んんっ…」

清四郎の首に両腕を伸ばして絡める。
薬の効果か、いつの間にか咳も鼻水も治まったようだ。

「ねぇ、清四郎にも、してあげようか?」
「ええ、して下さい…」


清四郎は咳も鼻水も出てはいないのだから、そんなものを塗ったって何にもなりはしないのに。

あまりに気持ち良さそうな悠理の様子に引き込まれたか、息を荒くして頷いた。


抱き合ったままベッドの上を転がり清四郎を下にすると、悠理は彼の上に馬乗りになって彼のパジャマを剥ぎ取った。
薄い色の瞳に小悪魔的な光を宿らせ、指先にたっぷりと薬を取ると、逞しい胸板につつ、と指を滑らせる。
両手を使って清四郎の胸を優しくマッサージし、指の先で興奮して尖ってきた乳首をいじった。


「ああ…悠理…」
のけぞった彼の首筋にキスをすると、堪りかねたように清四郎の手が悠理の両頬を挟み、激しく唇を吸われた。
「ん…んん…」

悠理もそれに応えて舌を絡ませ、清四郎の胸に自分の胸を押し付けた。
裸の胸が触れ合う感触。喘ぎながら清四郎が悠理の下半身に手を伸ばし、悠理も彼の股間へと手を伸ばした。



「あん、清四郎、あん…」
「悠理、悠理…」

お互いの、もっとも敏感な部分を刺激し合い、快感を高め―――


「!」
「!」

二人の手が止まった。

「い、痛いっ!痛いよ清四郎!ヒリヒリするぅ!」
「ぼ、僕もです!あ、い、痛い…」


ヴイ@クス・ヴェ@ラップにはメンソールが成分として含まれている。
「粘膜等には使用しないでください」と、使用説明書にもしっかり書いてある。


「シャ、シャワー、シャワーー!!」
「だ、駄目ですよ悠理っ!水で洗い流そうとしたら、余計に痛くなりますっ!」(←そんなことはない)
「じゃあ、どうしたらいいんだよぉ!い、痛い〜」
「べ、別の刺激で紛らわせましょう、フムッ!」
「ああっ!」


清四郎は「紛らわせる為に」どういった刺激を使ったのであろうか?何はともあれ痛みは「紛れ」去った。

適切(?)な処置を施した後、放心状態の悠理を抱きしめ、清四郎は囁いた。



「…なんだか、いつもより良かったような気がしますね。また、使ってみましょうか?」
「…ヘンタイ」




完。




良い子の皆は、真似しないように。(笑)

例年になく寒い冬で、私の周りでも風邪ひきさんがゴロゴロ。そんな皆さんに、「お見舞い」として書いたものです。(←迷惑)

…Web拍手は、「かわいいお話」と決めていたのに、5ヶ月で挫折。(^_^.)
いいんだ。所詮こんな奴なんだ、私は…orz

  

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