「キス魔」
「おはよう、悠理」で、チュ。 「今日はえらくご機嫌ですね」って、チュ。 一緒にいるときはいつも、あたいの肩を抱いてチュ、チュ、チュ。 あたいの髪や、頬や、唇に。
清四郎と付き合いだして初めて、奴が「キス魔」であったことを知った。 とにかく、「いったい、一日に何回キスしたら気が済むんだ?」」って聞きたくなるくらい、キスしてくる。
「なんでそんなにチュッチュッチュッチュするんだ?」って聞いたら、 「悠理がかわいいからですよ。かわいいな、と思うと、キスしたくなるんです」って、言われた。
バッカみたい、って思ったけど、実はちょっと嬉しい。 付き合う前までは清四郎ってばイジワルで、いつもゲンコツを落とされていたんだもん。 同じ降って来るのなら、ゲンコツよりキスのほうがいいもんな。絶対。
いま、清四郎はあたいの部屋のソファに寝転んで、単行本を読んでいる。 頭の下にクッションを2個挟んで、長い足を組んで。 そんなお行儀の悪い格好を最近見せてくれるようになって、あたいはすごく嬉しかったんだ。 だって、清四郎があたいに気を許してくれてる証拠だもんな。
あたいは清四郎の頭の下の床に座って、ソファに背をあずけて座って、テレビを見てる。 時折清四郎の手が、あたいの頭をくしゃくしゃと撫で、時にはぐっと引き寄せられ、キスをされる。 もう、あたいの心はとろとろに溶けて、幸せだぁ〜なんて思ってたんだ。
と、そのとき。 「んにゃ〜」と声がして、フクがソファの上に跳び乗ってきた。 フクは、最近妙に清四郎になついている。 今だって、「にゃ〜ん」とか甘えた声を出して清四郎に擦り寄ったりして。
あ、フクが清四郎の胸に手をかけた。 そのまま清四郎のあごに頭を押し付けて、ゴロゴロゴロ…… 「!」 清四郎が、フクの頭を抱えて「チュッ」ってした。 あ、また! より強く清四郎に頭を押し付けるフクに、チュッチュッって……
怒。 あたいはフクの身体を掴み、有無を言わさず清四郎から引き剥がした。 にゃーにゃーと抗議の声を上げるフクを、ぎゅ、っと抱え込む。 「どうしたんですか?悠理?」 清四郎が、あたいの勢いに驚いて起き上がり、あたいの顔を覗き込んだ。
「せーしろうの馬鹿っ!」 「って、何ですかいきなり。……ああ、フクが僕になついてきたんで、やきもちを焼いたんですか?」 「……」不覚にも、涙が浮かんできたぞ。 「しょうがないですねぇ。そりゃ毎日ここに来ているんだから、フクだってなつきますよ。でも、フクが一番好きなのは飼い主の悠理のことですよ。ねぇ?フク」 ち、違うっ! あたいが怒ったのは、怒ったのは〜〜〜〜!
「ほらほら、機嫌を直してください。ね?」 って頭を撫でられて、またチュってされた。 「フクを取るつもりなんてありませんよ。僕が欲しいのは悠理だけですから」 って、チュ。
……違うよ、清四郎。 でも、まぁ、いいか。 あたいはさっきのフクのように、清四郎の顎に自分の頭を押し付けた。 清四郎はそんなあたいをぎゅ、っと抱きしめて、またキスの雨を降らせてくる。 「大好きですよ。悠理」 なんて、言いながら……
いつの間にか、フクはあたいの腕から逃れてどこかにいってしまった。 フク、言っとくけど、清四郎にキスされていいのはあたいだけだかんな。
オワリ♪
バカップルで〜す。(笑)何か、急に極甘な二人を書いてみたくなったんですが、書いてみたらこうなりました。 うちの清四郎がエロいだけではなく、「キス魔」であることに気付いていた方はいらっしゃるでしょうか?とにかく、あらゆる話で清四郎は悠理にチュッチュチュッチュしておりますんですよ〜。 悠理たんが、愛しくて愛しくてしょうがない気持ちが「ちゅ〜」になるんでしょうね。きっと。
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