ぴんと張り詰めたような、冷たい空気。 冬の夜。気温は摂氏零度。 ふたりは、夜景を見るために、山の上までドライブをしてきた。
「さみ〜〜〜!」 「悠理、コートを着ないと!風邪をひきますよ」 展望台の脇の駐車場に車が止まるや否や、セーター姿で車の外に飛び出した悠理を、 清四郎が慌てて追う。
「ほら」 街を見下ろす展望台の縁で立ち止まった悠理に、清四郎が後ろからコートを着せ掛けた。 そのまま、後ろからふわりと抱きしめる。
「きれ〜〜!」 悠理が感嘆の声を上げる。 冷たく澄んだ空気の中で、街の明かりはきらきらと輝き、巨大なイルミネーションのようだ。 「本当に、綺麗ですね」 「うん。ここまで来た甲斐があったな〜」 白い息を吐き出しながら、悠理が答える。本当に嬉しそうに。 悠理のそんな声が聞けるだけでも、ここまで来た甲斐があった、と清四郎は微笑む。
「夜景って、今までもさ、何度も見たことがあったんだけど・・・」 「ん?」 「こんなに綺麗なの、初めてだ」 「僕も、初めてですよ。こんなに綺麗な夜景」 「・・・これって、お前と二人で見てるから?」 「どこでそんな、かわいい言葉を覚えてきたんですか?」
えへへ・・・と、自分を振り返って笑う悠理の唇に、清四郎はキスをした。
ずっと、片思いだった。 出会った日から、お互いに意識しながら、ずっと。 けれど、ようやく思いが通じた。片思いが、恋に変わった。
「・・・そろそろ車に戻りましょう。身体が冷えてしまいますよ」 「あたいはあったかいけど。お前は、寒い?」 「僕も、あったかいですよ。悠理の身体は温かいから」 「じゃ、もうちょっとだけ、見ていたい」
悠理の願いに、清四郎は逆らえない。 もう少し、二人は夜景を見続けた。 清四郎が、悠理を抱きしめる腕に更に力を込めた。 悠理が寒くないように。
「やっぱ、お前の手って大きいな」 清四郎の胸に頭をもたせかけ、男の手に自分の手のひらを合わせながら悠理が呟く。 くすくす笑う声が、悠理の頭上から降ってくる。 「当たり前でしょう?僕は男なんですから。女の悠理の手より、大きいのは当然ですよ」
そのまま手を繋ぎ、ゆっくりときびすを返して車へと戻った。 車に乗り込むと、無言でシートベルトを嵌める。 互いの唇は、微笑んだまま。 清四郎は車のエンジンを掛け、ゆっくりとアクセルを踏み込んで車をスタートさせた。
どんなに厚いコートよりも、暖房の機械よりも、お互いの体温の方が暖かいのだと知った、 初めての冬
end
(2005.12.16)
短け〜。(^_^.) はい、絶不調です。 単に、清四郎に後ろからぎゅってされてる悠理たんが書きたかっただけです。 次はもっと長いものが書けるよう、努力しよう…
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