あと少し、もう少し、待っていて。 お前に追いつきたくて、もがいてるあたいを、誰よりも近くで見つめていて―――

日曜日の午後3時。 表通りのカフェはカップルで大賑わい。 あたいは上機嫌で目の前に並んだケーキを平らげながら、小説を読みふけるお前を見つめている。 「ヒマでヒマで死にそう!どっか連れてって、で、何かご馳走して!」 そんなあたいの我侭にも、「しょうがありませんねぇ」なんて言いながら、付き合ってくれてる。 テーブルの上の、カプチーノにも手をつけないままに。
小説越しに、時折あたいを見つめる。 その瞳の奥の恋情になんて、本当はもう、とっくの昔に気付いてる。 だけど今はまだ、それに気付いてる振りはしない。 お前も、言わない。 ひとつには、この関係が心地よいから。 もうひとつは、あたいにはまだお前を受け止められはしないから。
可憐が言ってた。 「恋愛なんて、イーブンな立場じゃなきゃ成立しないし、長続きもしないものよ」 それはたぶん、正しい。 あたいじゃまだ、お前と対等な立場には立てない。 お前のすべてを受け止めるのは、容易なことじゃない。 だって、こんな男、世界中のどこ探したっているもんじゃない。 とびきりの、男。 そんなお前を受け止めるには、こっちもとびきりの女にならなきゃやっていけない。
だから、あと少し、もう少し、待っていて。 いつかお前にふさわしい、お前が誇れるような女になって見せるから。 けどそれまで、ずっとあたいを見守っていてくれな。 減らず口を叩くのも、強がりも、今はあたいの"精一杯”の証。 お前だけは、あたいのすべてをわかっていて。 誰よりも、あたいのことを見透かしていて。 呆れながらも、怒りながらも、ずうっと傍にいて。ずっと。
小説から目を上げたお前が、あたいの顔を見てふ、と微笑む。 大きな手が伸びてきて、親指であたいの口元についたクリームを拭う。 ぺロリ、と指を舐めた後 「まったく、子供みたいですねぇ」 なんて言って、小さく溜息なんかついたりして。
ああ、幸せ。 コーヒーの香りに包まれて、お前に溶けていってしまいそう。 「大好き」って、言ってしまいそう。 幸せな恋心は、ケーキよりも甘くあたいの心を満たすから。
けどあと少し、もう少し、あたいの成長を待って。 お前と過ごす、大切な時間のすべてを栄養にして、どんどん大きくなって見せるから。 誰よりも、あたいのことをわかっていて、見透かしていて。 我侭が過ぎたとしても、黙ってどこへも行かないで。傍にいて、ずうっと。
「待ってますよ、いつまでも、ね」 お前が、眉をすっと上げながら言った。 え?あたい、今の口に出して言った? 「ケーキ、もうひとつ食べたいんでしょう?」 …なんだ、そっちか。うん、もっと食べたい。
清四郎が、カプチーノに口をつける。黒い瞳に、優しい光が広がる。 穏やかな冬の午後、町の景色がコーヒーの淡色に染まる。 「ゆっくりでいいですよ。悠理」 呟かれたお前の言葉は、ケーキのこと?あたいのこと?
そうやっていつまでも、あたいを見透かしていて。あたいのことを、待っていて お前に追いつきたくてもがくあたいを、誰よりも優しい瞳で見つめていて。
な?清四郎。
end

…わけわかりません。(^_^.)
Salon de Rubyさまの素敵な壁紙セットを使いたくって、ともさかりえちゃんの「カプチーノ」の歌詞に絡めて妄想してみたんですけどね〜。
まぁ、清四郎に釣り合うような女になりたいと言う、悠理たんのかわいい乙女心…そう、受け取ってください。m(__)m
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