100万回生きたって…

 

 

 

「この絵本、すごくいいんだよぉ。僕、泣いちゃった。悠理や清四郎にこそ、こういうのを読んで欲しいね」

そういって美童が差し出したのは、目つきの悪い猫の絵が描かれた一冊の絵本だった。

 

「まぁ、懐かしいですわね。このお話、大好きでしたわ。悠理、読んでごらんなさいな。ひらがなばかりですから、読めますでしょう?」

「なんだい、馬鹿にして!」

野梨子が微笑みながら悠理に本を手渡し、悠理はムッとしながらも興味を引かれたのか、手にとって読み始めた。

 

「今度の彼女は、保母さんらしいわよ」

「なるほど、それで絵本かよ」

「わかりやすい男ですな、美童は」

可憐、魅録が囁きあい、清四郎が手元の新聞から目も上げずに笑うのに、美童は大真面目で演説をぶつ。

「うるさいな! 誰かを愛さない人生なんて、100万回生きたって意味がないって言う、深ーいお話なんだぞ! どんだけ頭がよくて物を知ってたって、清四郎みたいに真剣に恋愛出来ない人間はダメなんだ!」

「おや、心外ですね。僕だって恋愛の一つや二つ…」

「うっ、うっ、ひっく、ひぃぃっく…」

ひょい、と方眉を上げて清四郎が反論しかけた時、いきなり悠理が泣き声をあげ始めた。

 

「「「「「悠理?」」」」」

皆が悠理を見ると、悠理は絵本の最後のページを開いたまま、まるでそこに描かれた猫のように涙をまき散らし始めた。

 

「うわーん、感動だぁ。そうだよな、誰かを愛さない人生なんて、生きてたって意味がないんだよな。よし、魅録!」

と、魅録に人差し指を突きつける。

「は?」

魅録はわけがわからず、自分を指差す。

 

「久しぶりにナンパしに行くぞ! イイ男ひっかけて、あたいも意義のある人生を歩むんだーい!」

こぶしを握り締めてハナイキも荒くそう叫ぶと、悠理は魅録の襟首をつかみ、ずるずると引きずりながら部室から出て行った。

「ナンパって、悠理… つか、なんで俺ーーーーっ???」

かわいそうな魅録の声が廊下にこだまし、やがて消えていった。

 

「…なに、あれ?」

「ナンパって、男連れでどうすんのよ」

「あれでは、まだまだ恋愛など出来そうにありませんわね」

呆然と呟く三人をよそに、清四郎は視線を新聞に戻しながら、くすくすと笑いだした。

 

「まったく、面白い奴ですな、悠理は。恋愛など出来なくても、あいつと知り合えただけで僕の人生は充分価値がありますよ」

 

呟かれた清四郎の言葉に、目を丸くして顔を見合す三人。

清四郎はまだくすくす笑いながら、新聞を読み続けていた。

 

「なにしろ、100万匹に1匹いるかいないかの希少愛玩動物ですからね、あいつは」

 

ハハハ、と声を上げて笑い出した清四郎に、可憐、野梨子、美童の三人は互いに顔を見合わせて深い溜息をついた。

 

 

清四郎が己の恋心に気付くには、いったい何度、生まれ変わる必要があるのだろう?

そして、悠理が恋をするのにも。

 

 

 

完。

(2007.9.12up)

 

 


 

えーん。こんなもんでごめんなさーい!

目下、原作の悠理にとらわれすぎて、「【書け】だじょ女の呪い〜3章目【ない】」と、スレでも立てたい状態の私。(: _ ;)

ラブ度は低すぎてコンマ1もありましぇん。(泣)

 

ネタもとの絵本は皆さんご存知でしょうね?昔、本屋で立ち読みして号泣しました、私。(笑)

 

 

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