性/少/年

BY ポアンポアンさま

 

 

 清四郎が悠理と付き合い始めてから、2ヶ月が経過していた。

 

この間、彼女とはほんの2回ほど唇をあわせただけだ。

 

 

1度目は、告白をした時。

「悠理、これからお前を恋人として大切にするという約束の印です」

きょとんとしている悠理に、そっと唇に触れるだけの軽いキスをした。

 

2度目は、清四郎の部屋で試験勉強を済ませ、悠理が自宅に帰ろうとした時。

「あんがと。じゃなっ」

いつものように、明るく笑って帰ろうとする腕を掴み、引き寄せた。

最初のキスよりは、長いキス。

 

ぐっと唇を押し付けるようにし、その柔らかさを味わった。

悠理の放つ甘い香りが清四郎の鼻孔を擽る。

口を開かせ、舌も吐息も味わいつくしたい。小ぶりながら男性のそれとは明らかに異なる膨らみに触れてみたい。そう思ったが、微かな肩の震えと胸の前で抵抗する細い上腕の抵抗にあって、清四郎は、込み上げてくる熱いものを耐えた。

 

「すみませんでしたね」

唇を離し、そっと抱きしめた後、悠理の背中を宥めるように擦った。

 

 

19歳という年齢にしては、まだ幼く、少女のような悠理。

時折、真っ赤な顔で見上げてくる瞳に女性らしい艶を見出せないこともなかったが、それも気のせいかと思ってしまうようなほんの微かなものだった。

 

やはり、彼女は天真爛漫で無垢な子供のままだ。

“抱きたい”とは思う。

でもそれは、ずっと先のことだと思っていた。

 

 

 

試験終了後、彼女のリクエストに従い水族館へ行った。

閉館まで遊んだ後、海辺のレストランで夕食を食べ、夜も8時近くになって、二人はようやく剣菱邸の前まで戻ってきた。

 

「さぁ、悠理。着きましたよ。今日はここで失礼します」

門の前で車を止めると、清四郎は軽くハンドルに凭れかかり、悠理の方を見て言った。

今日は、剣菱邸には寄らず帰るつもりだった。はしゃぐ悠理に付き合い、疲れ果てている。さすがにこの後、万作おじさんや百合子おばさんの相手をする元気はない。

「おやすみ、悠理」

清四郎は、いつも別れる時のように、悠理の頭のてっぺんをくしゃくしゃと撫でた。

 

だが。

 

「・・・・・・・」

彼女は俯いたままだ。

 

「悠理?」

肩に手を置き、顔を覗き込もうとすると、それを振り払って、コツンと頬を肩口につけるように上体をあずけてきた。

悠理の温もりが優しく肩から伝わる。

「なに甘えてんですか」

揶揄するように言うと「やだ、もうちょっと一緒にいたい」とくぐもった声が聞こえた。

 

悠理がそっと顎を上げる。

フロントガラスに月の光が反射し、半開きの唇が照らされている。

キスを求めているのだと思うと、身体に震えそうなほどの昂揚感が漲った。

彼女が自分からキスを求めてくるなんて、初めてだった。

 

「悠理?」

首をかしげたまま、清四郎は、甘い唇に吸い寄せられていった。

 

ゆっくりと唇を重ね、舌を差し入れてみる。

一瞬、華奢な肩がビクンと震えたが、悠理は戸惑いながらも応えてきた。

唾液を送り込み続けると、口から溢れそうになったところで、彼女がゴクンと飲み込む。無我夢中で吐息を吸い、舌を己の口に引き込むようにすると、悠理は、縋りつくように凭れかかってきた。

そんな彼女が愛しくてたまらない。

いつまでも別れがたく、どちらからも離れられないでいた。

 

何度もキスを繰り返していると、門の近くに剣菱邸の警備員が近づいてくる。

それを目の端に捉えた清四郎は、気づかれないうちに唇を離した。

急に体を離すと、悠理が「あっ」と声を上げる。

泣きそうな顔で清四郎を見つめていた。

 

もっと・・・・・・そう、言っているように。

 

「人が来たんですよ」

清四郎は悠理の耳元で囁いた。

こんな所を見られるのは、公認の仲とはいえ、さすがに気まずい。

屋敷内にいる万作・百合子に伝えられては、後が面倒だ。名残惜しいがそろそろ帰すか、そんなことを思っていると、悠理が首に抱きついてきて、呟いた。

 

「・・・・・・今日は、ずっと一緒にいたい」

 

清四郎の胸に縋り付き、震える声で囁く悠理に、水族館で見た無邪気な少女の面影はもうない。まるで、甘い香りで誘うヴィーナスのように見える。

 

「・・・・・・清四郎」

耳元で囁かれ、他人よりは多く持ち合わせている、と思っていた理性が、あっさりと崩れた。

 

――― 帰したくない。

 

清四郎の中の男が、悠理という女を求めている。

 

「悠理、どうなってもいいのか?」

「・・・・・・・」

「僕は・・・・・・お前が欲しい」

 

腕の中で、真っ赤な顔を隠すようにしている悠理がコクンと頷いたのを知ると、清四郎はアクセルを踏み込み、車を発進させた。

 

 

 「清四郎?」

車を止めると、悠理が首をかしげる。

二人の目の前には、外灯に照らされたシンプルな門があった。

表札に『菊正宗』とある。

 

ガレージに車を入れると、清四郎は、悠理の手を引いて家の中へと招き入れた。

「今夜、家族は誰もいません。おやじとおふくろは旅行中だし、姉貴はサークルの合宿です」

 

――― 誰もいない。

悠理がほっとしたような、恥ずかしいような表情をするので、清四郎はクスリと笑い、握る手の指をからめた。そのまま黙って階段を上がり、自室へと向かう。

 

ドアを閉めると、背後から羽交い絞めするように悠理を抱きしめた。

ふわふわの髪に鼻をつけると、彼女の温もりが生々しく肌に伝わってくる。

清四郎は、左手で腰の辺りをぐっと掴み、右手をシャツの裾から侵入させていった。

「せいしろぅ・・・・・」

喘ぐように名を囁かれ、撫で上げる手をブラジャーの上で止める。

首筋にキスを繰り返しながら、そっと包み込むように小さな胸を掴んだ。

 

持ち上げるようにして揉むと、悠理は、初めて与えられる男からの刺激に、静かだった息を徐々に荒いものへと変えて行く。

「・・・・・・せいしろぅ、あたい、どうしていいかわかんない・・・・・」

いつも強気な彼女が、今にも泣き出しそうな声を出した。

 

「大丈夫だ、僕にまかせろ」

向きを変えてきつく抱きしめると、そのままベッドへ倒れ込んだ。

荒々しく押し倒したせいで、ベッドがミシミシと音を立てる。

 

清四郎は悠理の乱れた髪を梳き上げた。

そのまま指先を、きつく閉じられた瞼、頬、首筋、鎖骨へ、触れるか触れないかの軽いタッチで滑らせて行く。

 

だが、緊張のせいか、彼女の体は強張ったままだ。

 

清四郎は、悠理の整った面差しを愛しげに見つめると、指先で辿ったところへ、今度はゆっくりとキスを落としていった。

 

徐々に力が抜け、悠理の唇が自然と開く。

それを清四郎は見逃さなかった。

即座に唇を塞ぎ、舌を絡め合う。

唾液が混じりあうと、一つになっていくような気がした。

舌先が痺れるほど、長いキスをする。

 

「んっ、ん・・・・・・」

激しいキスに、くぐもった声を出しながら、悠理が清四郎の首に腕を絡ませてきた。

ぴたりと寄り添う身体。悠理の胸の膨らみが清四郎の胸板に当たる。

細くしなやかな彼女の足先が、もぞもぞとシーツの上を漂った。

 

「悠理・・・」

清四郎は、悠理という女が醸し出す甘美な雰囲気に、我を忘れて酔いしれた。

 

太腿に手を伸ばすと、足の付け根に向かって撫で上げる。

それを、何度か繰り返した。

首に絡まる彼女の腕をはずし、右手で束ねて頭上に押さえつけると、頬から首筋を、唾液を塗り込むようにして舐める。左手はもっとも触れたい場所へ向けて下肢を彷徨っていた。

 

荒い息を繰り返していた悠理が、声を上げる。

「ぁっ・・・・・・」

小さく恥ずかし気に、初めて女の声が漏れた。

 

――― 彼女を初めて抱くのが自分で良かった。

 

清四郎の胸は、歓喜に震える。

愛撫に戸惑いながらも応えていく悠理が、たまらなく愛しい。

そんな、彼女を慈しみたい思いが、このまま抱こうとしていた強い衝動を抑えた。

 

拘束していた腕をおろし、わずかに肌蹴た胸元から鎖骨にキスをすると、悠理の顔を見る。

ほんのりと赤く頬を染め、汗で髪が額に張り付いていた。

激しく上下している胸。

「・・・・・・せい、しろ?」

清四郎が休む事無く動かしていた手を止めると、悠理がゆっくりと目を開けた。

汗でびっしょりの髪を撫で上げてやる。

「少し急ぎ過ぎましたね。まだ時間はたっぷりある。先にシャワーを浴びるか?」

悠理は、恥ずかしそうに視線を逸らし、コクンと小さくうなずいた。

 

乱暴に抱きたくない。性欲だけを押し付けたくなかった。

清四郎は額に軽くキスを落とすと、悠理を抱き起こした。

わざとらしく「一緒に行きますか?」と聞く。

真っ赤な顔で首を振り「後で行く」という悠理を残し、清四郎が先にシャワーを浴びた。

 

 

ベッドに横たわり、バスローブ姿で待っていると、悠理が渡したバスタオルを巻きつけ、戻ってきた。

部屋の入り口で、はにかむような顔をする。

「おいで」

掛けていたシーツをめくると、するりと清四郎の胸に入り込んだ。

石鹸の匂いがする。

清潔な香りが、無垢な悠理によく似合っている、そんなことを清四郎は思った。

 

静かに抱き合い、しばらく互いの温もりを確かめる。

じっとしていると、戸惑いがちに悠理が聞いてきた。

「ね、清四郎」

「ん?」

「清四郎は本当にあたいでいいの?」

「何が?」

「・・・んとね。あたい馬鹿だし、胸もなくって女としての魅力なんてないし、清四郎にはもっといい人がいるかなって・・・・・」

 

何を今さら・・・・・・と清四郎は耳を疑った。

「・・・・・・ばか」

こつんと、手の甲で額を小突く。

「痛てっ、馬鹿だけど馬鹿って言うな!」

腕を振り回して暴れだした悠理を清四郎は体全体で押さえつけた。

両手を掴むと、左右に押し広げ、悠理の上に馬乗りで圧し掛かる。

 

「僕がどれだけお前を愛しているか、これから思いしらせてやる」

 

そう宣言すると、むしゃぶりつくように口づけた。

唾液がしたたり、悠理の肩に流れ落ちる。

名残惜しげにゆっくりと唇を離すと、糸を引くように透明な液体が二人を繋いだ。

 

「悠理」

頬をなでながら愛しい女の名を呼ぶ。

悠理が、きつく閉じていた瞼をうっすらと開けた。

目と目が合うと、清四郎はにっこりと微笑み返し、悠理の手を掴んで「ほら」とシーツの中へと誘導した。

 

「なっ!・・・・・」

触れさせた瞬間、悠理が火を吹くように赤面する。

 

「僕が、お前が欲しいと言っているのがわかるでしょう?」

 

驚いて目を見開く悠理に、清四郎は再度唇を押し付け、舌を差し入れると悠理のバスタオルを剥いだ。

悠理は、瞬時に胸を隠そうとするが、それよりも先に清四郎は腕を掴む。

指と指を絡め、悠理の体を開きながら、口付けを下へ下へと降ろしていった。

もっと素肌を感じたくて、清四郎もバスローブを脱ぐ。

 

 

一糸も纏わない悠理は、とても美しかった。

 

透き通るように白い肌。

 

小さいながらも形の良い乳房。

 

薄ピンクに染まる乳輪も乳首も、これまでに知ったどんな女よりも見事だった。

 

 

「悠理、綺麗だ」

乳首を口に含み、甘噛みすると悠理が悲鳴を上げた。

「あっ、やぁ・・・・・」

未知の感覚と羞恥に、仰け反って逃げていこうとする悠理を、清四郎は抱きしめる。

「悠理、楽にしろ。怖がらなくていい。これからもっと気持ち良くしてやる」

 

言葉通り、清四郎は体中を撫で回し、舌で追い、愛撫を繰り返すことによって悠理の体をほぐしていった。

 

悠理の肌理細やかな肌が、吸い付くように清四郎の手に馴染む。

ずっと触れたかった体を、清四郎は舌先で、手で愉しんだ。

乳房を揉みしだき、いたる所にキスをして性感帯を探す。

 

悠理が恍惚の世界に入っている間に、清四郎は悠理の中心へと向かって行った。

すでに力の入らなくなっている足を、膝の裏に手をあてて開く。

陰毛を撫でながら、その部分にキスをすると、悠理の下腹部がうねった。

秘部から、甘く濃厚な匂いが漂う。

 

敏感な部分は、すでに溢れるように濡れ、雫は太ももまで流れ出ていた。

その全てを逃さないよう、清四郎は舌を這わせて呑み込んでいく。

そして、舌先を尖らせて、突起の部分をつついた。

 

泉の溢れる源にも、舌を這わせる。

指を入れると、それは簡単に吸い込まれていった。

舌と指で、思うがまま悠理の甘さを味わう。

愛する彼女への愛撫は、清四郎の頭と心を痺れさせた。

 

――― 悠理の中へ入りたい。

 

そんな時だった。

シーツをぎゅっと握り締め、喘ぎ声をあげていた悠理の手が清四郎の髪を掴んだ。

「いゃっ・・・せいしろ、もうやめ、て」

髪を掴む手が震えていた。体全体が震えているのに気づき、清四郎は顔を上げる。

悠理は、目を閉じたまま、涙をポタポタと落としていた。

 

「悠理・・・・・・ごめん。大丈夫か?」

濡れる瞼に唇を落とす。

悠理は、清四郎にしがみついて泣いた。

「悠理、ひとつになろう」

何も答えなかったが、彼女の首が小さく上下した。

 

「少し、我慢しろ」

そう言うと、清四郎は悠理の膝を折って足を押し広げ、自分自身をあてがった。

 

  

イラスト By ネコ☆まんまさま

 

悠理は、わずかな抵抗を示しながらも清四郎を受け入れていった。

「いっつぅ・・・・・・」

悠理が痛みに耐えかねて呻く。

「悠理、力を抜け。少しは楽になる」

初めて男を受け入れたそこは、狭くきついが、熱い内壁が軟らかく清四郎を包み込んだ。

 

そっと腰を揺すってみると、軽い収縮がおこり、悠理の肉壁が撫でるように張り付く。

その途端、清四郎の理性はスパークした。

できるだけ苦痛は与えまいとゆっくりと動いていたが、長くは我慢できない。

 

「悠理、愛してる。許してくれ」

そう言うと、一端腰を引き、勢いよく突いた。

感情の赴くままに、大きなストロークを繰り返す。

「やぁっ!」

悠理が声にならない呻きを洩らした。

 

「せいしろ、やめて、やめてっ!・・・・」

 

縋るように伸ばされた手が清四郎の背に食い込み、鋭い痛みを感じた。

だが、その痛みすら快感に変わる。

「悠理、悠理・・・愛してる」

狂ったように名を呼びながら、何度も何度も突いた。

 

腰を深く入れ込んだまま、時折ほぐすように、左右に小刻みに振る。

すると、徐々に険しい表情は和らぎ、悲鳴をあげていた声は子猫のように変化していった。

 

永遠に続くかと思われる快感が、波のうねりのようにやって来た。

 

ふいに、悠理の手が背中から離れ、宙を彷徨う。

限界が近い。

「清四郎!」

悠理が叫ぶと、清四郎は、その手を掴み押し広げたまま覆いかぶさった。

「悠理!」

清四郎は腰を思い切り突きいれる。悠理が全身を硬直させた。

 

 

白い液体が放たれ、二人は同時に果てた。

 

 

しばらく、清四郎は悠理の中にいた。

二人の汗と、交じり合った体液の匂いが漂う。

噎せ返るような濃厚な香りが、二人を痺れさせていた。

 

荒い息が整ってくると、ようやく分身が萎え始め、清四郎はそれを抜いた。

 

事が終わり、抱きしめた悠理は、気絶したかのように目を閉じ脱力している。

 

 

 

瞼にそっとキスをすると、やがて、静かな寝息が聞こえ始めた。

 

 

「悠理、愛してる。ずっと僕のそばにいろ」

 

―――彼女に僕の言葉は届いただろうか?

 

「何があっても離しませんけどね」

柔らかな髪にキスを落とすと、清四郎は、彼女を胸に抱いたまま眠りについた。

 

 

 

END

 

 

はっ!ワタクシとしたことが、避妊をするのを忘れましたーーーーー!

ダメじゃん!

 

 


 

ちっちっちっ(と、指を振る)、いかんなぁ、姉。ちゃんと避妊はさせなきゃ。(爆)

 

 

黒背景部屋