可憐さんの放課後 Byにゃんこビールさま
電車通学の可憐は、毎朝女性専用車両を利用している。 携帯でメールやゲームに夢中になっている女子学生、 ポーチの中からたくさんの化粧品を出して化粧しているOL、 経済新聞を難しそうな顔つきで読んでいるキャリアウーマン。 『今日もやっぱり私が一番美人だわ』と可憐は自慢げに微笑む。 可憐にとってこの女性専用車両は、痴漢防止だけではなく 朝から優越感にひたれる場所でもあった。
「ん?」 本日発売の女性雑誌の広告にふと可憐の目がとまった。 可憐は食い入るように吊り広告を見た。 そして駅に着くなり、コンコースにある本屋でその雑誌を買った。 これで退屈な放課後が楽しくなる。 可憐は足取り軽く学校に向かった。
当番を適当に済ませて、可憐は部室に急いだ。 部室に入るなり朝買った雑誌を前に突き出した。 「ジャーン♪見て見て!」 部室のテーブルにいたのは男性陣。 清四郎はパソコンで株価のチェック、魅録はギターをいじっていた。 唯一、週末にデートする店を探していた美童だけが興味を示した。 「なに?いいお店でも載ってるの?」 しかし男性陣の目に飛び込んできた特集のタイトルは
『恋と結婚、占います』
恋にも、結婚にも興味がない清四郎と魅録は無言で視線をそらせた。 どちらにも興味はあるが、明日のデートが大切な美童も自分の雑誌に 視線を戻した。 可憐はムッとしながら部室を見回した。 「野梨子と悠理は?まだきてないの?」 男性陣には用はない。 こういう占いは女だけで盛り上がるのが楽しいのだ。 「何ですの?大きな声を出して」 「おやつの差し入れでもあったのか〜?」 こちらも恋にも、結婚にも興味はなさそうな野梨子と悠理がキッチンから顔を出した。 「いたいた!早くこっちにきてよ」 お茶の支度をしていた野梨子と、手伝いと称してつまみ食いしていた悠理を手招きした。 「ちょっと美童!あっちに座って」 ひとり離れて座っていた美童を清四郎の隣に移動してもらって、テーブルの半分を女性陣が陣取った。 「で、どんなおやつ?」 悠理は舌なめずりをしながら大人しく座った。 「これよ、これ!」 可憐は雑誌を広げて見せた。 「「赤い運命・裏血液型占い???」」 野梨子と悠理は声を揃えた。 ふたりの声に反応して男性陣も顔を上げた。 「これはね、4つの単純な血液型占いじゃないのよ。質問に答えて表か裏か診断するの」 「わたくし、興味ありませんわ」 間髪入れずに野梨子拒否。 「なっ!なんでよっ」 朝から楽しみにしていたのに野梨子の一言で無下にされるわけにはいかない。 「そもそも血液型は血球の抗原の違いによる分類ですのよ。そんなもので性格やまして運命だなんて当てになりませんわ」 みんなのカップに紅茶を入れながら野梨子は小さく首を振った。 「…野梨子、あんたのそういうところが可愛くないのよ」 反論できない可憐は小さい声で呟いた。 「それにしても可憐が占いなんて… いま彼氏いないの?」 頬杖をついていた美童が不思議そうに聞いた。 こちらも反撃できず可憐はキッと美童を睨んだ。 「うるさいわね!単なる暇つぶしよ、暇つぶし」 決して暇つぶしではない可憐。 「ふーん。いいじゃん、どうせ暇なんだからさ」 思いも寄らず悠理が参加表明。 悠理はあーんと大きな口を開けてふたつ目のタルトを口に運んだ。 「そうよ、お遊びよ!お遊び」 決してお遊びではない可憐。 「仕方ありませんわね」 暇なのは同じなので野梨子も渋々ながら承諾。 これで役者は揃った。
「これは三択の質問に答えてポイントを計算するのね」 可憐が占いの説明を始めた。 「えー、計算なんて面倒くさー」 悠理が文句を言う。 「それじゃこうしましょ。野梨子の点数は美童、悠理のは清四郎、私のは魅録が計算してね!じゃ、行くわよ」 勝手に計算係に任命された男性陣は一斉に顔を見合わせた。 「第1問!長期の休みがあったらどこに旅行に行きたいですか? @ヨーロッパ Aアメリカ B東南アジア さ、どれ?」 占いというよりもクイズを出題しているような可憐。 「あたいはアメリカ横断するんだいっ!」 「私は東南アジアでエステ三昧がいいわ〜」 「わたくしはヨーロッパですわ。世界遺産もたくさんありますもの」 見事に三者三様の回答である。 「だれも横断しろなんて言ってませんけどねぇ…」 清四郎はブツブツ。 「ぼくもヨーロッパがいい」 聞いてもない美童まで答える。 「男はいいの!野梨子が5点、悠理が7点、私が3点よ、いい?」 「はいはい…」 男性陣は大人しく点数を書き留める。 「第2問!映画でヒロインを演じるならどれ? @ラブロマンス Aアクションアドベンチャー Bサスペンス どれにする?」 決して映画館の前で迷ってるわけではない。 「絶対にアクション!悪いヤツをやっつけるんだっ」 椅子から立ち上がり、えいっえいっと見えない悪者を倒す悠理。 「危ねぇーなー…」 魅録は眉間にしわを寄せながらギターを端に寄せた。 「わたくしはサスペンスですわね」 犯人のトリックを解こうと野梨子は腕組みをして頷いた。 「私はもちろんラブロマンス… 相手はブラピがいいわぁ」 目の前に浮かんだブラピをうっとりと見つめながら可憐は呟いた。 「盛り上がってるところ申し訳ありませんが、何点なんです?」 妄想の世界に入り込んでいた女性陣を清四郎は呼び戻した。 「えっ?ああ、ラブロマンスが3点、アクションが7点、サスペンスが5点よ」 現実に戻された可憐は答えた。 「次の第3問、煮詰まったときにリフレッシュするなら? @温かいミルクティ A果汁100%のオレンジジュース B炭酸のきいたコーラ」 ご注文ではない、質問は続く。 「あたいはコーラ」 悠理、挙手して注文。 「わたくしは、ミルクティがいいですわ」 「私もミルクティ」 ちらりと美童に視線が集まった。 「わ、わかったよ。紅茶を入れ替えればいいんだろ?悠理はコーラね」 ウェイター美童、そそくさとキッチンへ向かった。 「わりぃけど… あと何問あんの?」 魅録がそっと可憐に声を掛けた。 「全部で9問。ちなみに私と野梨子は3点、悠理が7点よ、いい?次〜っ」 こんな調子で9問の質問が終わった。
「質問の合計点が45点以上なら表、44点以下なら裏なの。何点になった?」 ワクワクして可憐は各スコアラーに聞いた。 「可憐は46点だから表、だな」 「野梨子は41点の裏だよ」 「悠理は52点の表。せめてテストでこれくらい取ってほしいですよ」 清四郎のお小言に悠理は聞こえないふりをした。 「ほら、私と野梨子は同じA型だけど結果は違うでしょ?まずA型の裏の野梨子ね…」 無関心を装ってる野梨子でも内心はドキドキだ。 「え〜っと、物腰が柔らかく、気配りも上手。常に周囲との調和を図り、ルールを守って生きる優等生タイプ。だって」 「へー、当たってるじゃない」 美童は関心した。 しかし野梨子本人は複雑な気分である。 「第一印象は非常にソフトで愛想がいいのだが、信頼関係を結ぶまでには時間がかかる。 ホント!中学の時の野梨子ってそうだったわよね」 「そーそー!お高くとまった優等生でさー」 可憐と悠理がうんうんと頷き合った。 「もう結構ですわっ!」 野梨子のご機嫌が斜めに傾き始めた。 「それよか野梨子の恋愛はどうなのさ」 美童に促されて可憐は恋愛欄を読んだ。 「好きな男性がいても自分から告白することはまずあり得ない。ふられたときのことを考えると怖くてでない。野梨子ぉ、怖がってちゃだめよ」 可憐は心配そうに眉を下げた。 「大きなお世話ですわっ!」 野梨子をよそに可憐は次を読む。 「その消極的のせいで、掴み損ねる恋の数もかなり多いといえる。ほら〜言わんこっちゃない」 まるで野梨子の恋愛相談に乗っている気分の可憐。 「ときには思い切って彼の胸に飛び込んでみる勇気が幸せをもたらす。ですって!飛び込んじゃいなさいよ!野梨子ぉ」 「そうだよ、野梨子はもっと恋をしなくっちゃ」 可憐に美童も賛同。 「そんなものっ、必要ありませんわっ」 野梨子は真っ赤になった顔を背けた。 「結構当たってんな」 「ええ、思いの外、ズバリと」 黙って聞いていた魅録と清四郎も頷いた。 「それじゃ表の可憐はどうですの?」 これ以上やいのやいの言われるのを嫌った野梨子は話題を変えた。 「いいわよー。えっと、几帳面で努力家という本来のA型気質がより強調されている。ですって!当たってるわ〜」 うふふっ、満面笑みの可憐。 「確かに惚れた男にはマメだよな」 「ええ、玉の輿のためには努力も惜しみませんよ」 魅録と清四郎は頷いた。 「柔軟性や融通に欠ける部分もあり、周囲から頑固者と思われることねある…自分に厳しい分、人にも厳しい。お、お局様候補ナンバー1です…ってぇぇぇ?」 非常に雲行きが妖しくなってきた。 「頑固者だって!おやじみてぇ」 きゃははは、と悠理がお腹を抱えて大笑い。 「あら、お局様だなんて可憐も当たっているんじゃありませんこと?」 ほほほ、と野梨子は口元を押さえて笑った。 「ふんっ!恋愛は違うわよ。恋に対する憧れる気持ちが強い。恋に落ちると家に押しかけて手料理を作ってあげるなど一気に尽くしモードへ…」 「ジルベルトのときそうだったよね、料理まで習ってさぁ」 美童の思い出話に可憐の眉間のしわが寄ってくる。 「すげぇ、当たってるぜ」 「なかなか侮れないですな」 魅録と清四郎は深く頷いた。 「生活が彼中心になり、自分の生活ペースを崩してまで甲斐甲斐しく世話を焼く。でも相手にとってはそれが負担に…なることも…心に、留めておこう…」 最後の方は尻すぼみ。 「相手の方に負担になっているんですってよ。よーく肝に銘じておくことですわね」 おほほほほほほほ、と野梨子の勝ち誇った笑い。 当たってるだけに可憐は言い返せず、拳をぷるぷる振るわせた。 「ねーねー、次はあたいのを読んでよ」 タルトも紅茶もコーラも腹に片付けた悠理がせがんだ。 「い、いいわよ。悠理はO型の表だったわよね」 可憐は気を取り直し、パラパラとページをめくった。 「えっと、生きることへの限りない情熱を秘めている。明るくておおらかで常に前向きに進む。逆境にあっても楽観的な気持ちを失わず、持ち前の力強さで危機を乗り越える大きなパワーがある…」 一瞬の静寂の後、一同大爆笑。 「確かに明るくておおらかですよ」 「前向き、前向き」 「楽観的だしね」 「バイタリティは人並み外れてますわ」 悠理はみんなに笑われてプーッと唇を尖らせた。 「それで?悠理の恋愛はどうなんです?」 騒ぎに紛れて何気なく可憐に促す清四郎。 可憐は目じりに溜まった涙を拭いて次を読んだ。 「プライドが高く、恋の相手にも周囲に自慢できるような見栄えのよさを求める。アプローチを受けてもルックスや経済力に納得しないとOKしない。そのハードルの高さが良質の恋を遠ざけていることも。もっと相手の内面にも目を向けると幸せな恋が入りそう。ですって」 「悠理のタイプって悠理より強い男性だっけ?」 「強いだけじゃなくって、相手の内面も見なさいってことですわよ」 「あら〜、結構面食いなのよ、悠理って」 「どちらにしてもハードルは高いよな」 こそこそと呟く仲間たち。 「うるさいぞっ!」 悠理は顔を真っ赤にしてふん!と横を向いた。 「げっ」 悠理の目に飛び込んできたものは、仁王立ちしている清四郎。 しかもその背中にはなにやらメラメラと「闘志」という字が燃え上がっている。 「ハードルは高いに超したことはありません。望むところです」 ふっふっふっ、と清四郎はほくそ笑んでいた。 なにしろ清四郎と悠理は付き合い始めたばかり。 以前の婚約騒動のことがあるから、まだ仲間たちにも言えずにいる状態。 闘争心に燃えている清四郎をみんなに見られるんじゃないかと 悠理はひとりで気をもんでいた。
「そういえば相性占いとかあるのよ。友だち関係とか…」 可憐の言葉に清四郎はさっと元の席に戻ってきた。 「A型は魅録よね。A型の男友だち。つまらない話でも聞いてくれるソフトな性格の反面、彼女ができたら女友達と2人きりでは会わない、という頑固さも持っている。だって」 「えーーーっ!魅録、彼女できたら遊んでくれないの?」 悠理がブーと抗議の声を上げた。 「なっ、かっ、関係ねーよ!」 魅録の顔は真っ赤。 「そんなA型と友だちとして相性がいいのがO型の表。やっぱ悠理だわ」 「ぴったりですわね」 「いつもふたりで遊んでるもんね」 みんなが納得している中、ひとり清四郎だけは面白くない。 「そんな友情は魅録に彼女ができたら木っ端微塵、お終いですよ」 ふんっとご機嫌斜めの清四郎を不思議そうに可憐は見上げた。 「なに機嫌悪いのよ。わかった、わかった、次は清四郎のAB型を見てあげるって」 「よろしくお願いします」 清四郎は姿勢を正した。 「話を聞くのも話題の振り方もうまい、典型的な八方美人タイプ。親しくなってくると段々合理的な批判精神を発揮し始める。皮肉っぽい発言が増えるので反論する強さがないと付き合っていくのは無理だろう」 一斉に清四郎に視線が集まる。 「怖いくらい当たってるな…」 「確かに八方美人だし」 「理詰めで追いつめるし」 「…典型的なAB型ですのね」 ぼそぼそと呟く仲間を無視し、コホンと清四郎は咳払いをした。 「で、相性がいいのは誰なんです?」 可憐は雑誌に目を戻した。 「えーっと… A型の表って、わたしぃぃぃ?」 可憐は食い入るように雑誌を読み直した。 「せ、清四郎と可憐が仲がいいなんて想像できないぞ!」 思わず力強く反論する悠理。 「お前、なにムキになってんだよ」 魅録が不思議そうに悠理を見た。 「ねーねー、ぼくはどう?」 フーフー鼻息荒い悠理の隣で脳天気な美童が可憐に催促した。 「美童のB型ね。お笑いネタのように面白い話をして笑わせてくれる。どんなに深い話をしても笑いやノリで煙に巻く、決して本音を見せないですって!」 一気に美童は不機嫌。 「よ!この無責任男!」 「これからは美童に真面目な話をしちゃいけませんわね」 「笑いたいときは美童と話せばいいのよ」 「しかし僕たちにも本心を見せてないとは残念ですよ」 「ダチだと思ってたのによ…」 口々に勝手なことを言い、美童との距離を離す一同。 「何だよ!B型はお気楽でお調子者だって言いたいのかよ!」 顔を真っ赤にして怒る美童に可憐はお腹を抱えて笑った。 「みんなとは言わないけど…美童はまさしくそうなんじゃない?」 ますます美童は憤慨。 「それでも相性がいい女の子はいるんだ!可憐、続き読んでよ!」 半ばヤケクソの美童が先をせがんだ。 「はいはい… あら、ここにはいないわ。O型だけど悠理とは逆の裏だし」 「やめろよ〜、いっつもあたいの後ろで隠れるような男なんて相性いいわけないじゃん!」 違うとはいえ、唯一のO型の悠理に拒否されて美童はうなだれた。
しかしここでへこたれる美童ではない。 「友だちの相性はどうでもいいんだ!恋愛の相性はどうなのさっ」 笑い転げている可憐を美童は突いた。 「恋愛〜?ちょっと待って… A型の魅録は、と…」 「俺はいいって!」 まだ何も言ってないのに魅録の顔は赤くなってきている。 「あら!一番相性がいいのは私と同じA型表よ。野梨子の裏も3位だし」 このこの〜、と魅録を冷やかす相性ばっちりの可憐。 「よかったですねぇ、魅録。可憐と野梨子と相性がよくて」 悠理が入ってなかったのが嬉しくてたまらない清四郎はニコニコ。 冷やかされた魅録はただ黙って冷たくなった紅茶をすすった。 「次は冷血漢のAB型ね」 「冷血漢、は余計ですよ」 清四郎はむっとしながらも期待して待つ。 「えー!以外!悠理のO型表が1位だって。ABとOって相性悪いって言われてるけど。よかったわね、清四郎」 「そうですか。それはありがとうございます」 特に意味のない可憐の祝福の言葉に素直に喜ぶ清四郎。 「あら?悠理顔が真っ赤ですわよ?」 「いつもなら文句言うくせに…」 「どうしんだ?熱でもあんじゃねーか?」 嬉しそうに微笑む清四郎の隣で、顔を真っ赤にして汗を流している悠理を、 みんなは不思議そうに見つめた。 「魅録と清四郎はいいよ!ぼくはどうなのさ!」 切羽詰まった美童のお陰で、悠理への関心は背けられた。 「B型の美童は…AB裏、O裏、AB表。ってことはここに該当者はなし」 可憐はそう言うとパンッ、と雑誌を閉じた。 「えーえーえー!魅録も清四郎もいたのにぼくには誰もいないの?」 半泣きの美童。 「いいじゃありませんの。美童は女性であれば占いなんて関係ありませんでしょ?」 野梨子の一言に美童はヘナヘナと座り込んだ。 「そうだわ!うちのそばにショッピングビルができたのよ」 しょぼくれている美童をよそに可憐が話題を変えた。 「京都の小間物屋も初めて入ったんですよのね」 野梨子も手を叩いた。 「BMWの日本一でかいディーラーが入るんだぜ」 魅録も指を鳴らした。 「ふんっ!日本初進出のレストランだってあるんだぞっ」 立ち直った美童も参加した。 「そこが今日、プレオープンパーティなの。みんなで行かない?」 かばんからインビテーションカードを出して可憐はウインクした。 「パーティ?行く行く!」 パーティと聞けば悠理が食いついた。
みんながパーティの話に盛り上がっている間に、清四郎はそっと可憐の雑誌を手に取った。 清四郎が可憐の雑誌を読んでいることに誰も気が付かない。 すると、あるページが目に止まり、清四郎はニヤリ、と笑みを浮かべた。 「清四郎!今日のパーティは好きなレストランに入って好きなだけ食べていいんだって!」 何も知らない子羊・悠理が狼・清四郎のところへぴょんぴょんと近寄った。 「僕たちは友だちよりも恋人の方が相性がいいみたいですね」 清四郎はそっと悠理の耳元に囁いた。 「…うん」 悠理ははにかみながら微笑んだ。 「悠理、ここを読んでおいて下さい」 清四郎はそういうと可憐の雑誌を悠理に渡した。 「なに?」 そこにはAB型の彼氏についてが書かれていた。 「特に最後のところ」 そう言い残して清四郎はパーティで盛り上がる仲間の輪に加わった。 仕方なく悠理は雑誌に目を落とした。 『…一度燃え出すと恋に狂うところもあり、いつも冷たいものの言い方をするAB型の男性が情熱的になった表現を用いることもあります…』 悠理はうんうんと頷いた。 今までは意地悪なことばかり言っていた清四郎が、ふたりっきりになると 腰が抜けるような甘い言葉を囁く。 『…つまらないことで気分を悪くして、なぜ怒っているのか聞かれても素直に言えず、ヒネクレ者に見られてしまいます…』 悠理は深く頷いた。 ふたりで出かけると清四郎は突然不機嫌になることがある。 超自然体の悠理には到底理解できない。 しかしなぜ今更こんなものを読めと言ったのか、悠理は首を傾げて清四郎を見た。 すると清四郎は口パクで「さ・い・ご」と伝えた。 「最後…?」 最後の項目に悠理は視線を動かすと、 『カラダでもっと愛し合うために』 と書いてあった。 悠理は一気に顔が茹で上がった。 「なななななななななっ」 声に出せず悠理はわなわなと雑誌を握りしめた。 そんな悠理を見て清四郎はにっこり微笑んで「いいから読め」と指令。 渋々悠理は最後の項目を読んだ。 『…気が乗らないときにしつこく誘われるのは嫌いだが、サービスされることは嫌いじゃないので、その見極め力を身につける必要がある…』 はて、清四郎の気が乗らないときなんてあったか? まして悠理から誘う事なんて皆無。 清四郎と悠理の間ではまったく当てはまらないことだ。 悠理は首を傾げた。 不思議そうにしている悠理に清四郎は「いちばん、さ・い・ご」と口パク。 「ん?一番、最後?」 悠理は再度、雑誌に目を戻す。
『サービスされることは嫌いじゃないので、その見極め力を身につける必要がある』
ボッ、と悠理の顔から火が出た。 さすがに話の輪に加わらない悠理を不思議に思った可憐が振り返った。 「悠理、どうしたの?顔真っ赤だし、汗までかいちゃって!」 なにやらほわほわと悠理の頭から湯気が出ているようにも見える。 「あら、具合悪いんですの?」 「お前、大丈夫かよー」 「風邪でも引いたんじゃない?」 可憐の声に仲間たちも悠理の側に寄ってきた。 しかし悠理は金魚のようにパクパクと口を開けたり閉めたり。 そこにすっと清四郎が割って入った。 「どうやら悠理は熱があるようなので僕が家まで送っていきます」 何とも誠実そうな清四郎に仲間たちは黙って頷いた。 「えーっ、パーティは?」 悠理はムッと抗議の声を上げた。 「パーティは無理です。家で色々と勉強を見てあげますから」 「げーーー」 一気に沈む悠理にそっと清四郎は耳打ちをした。 「ほら、色々と見極める力を身につけないといけないでしょう?」 「!!!」 くるりっと清四郎は仲間たちの方に振り返った。 「では、お先に失礼します」 そう清四郎は言葉を残すと顔を真っ赤にして足下をふらつかせた悠理を抱えて 部室から出て行った。
「どうしたんだろ。突然勉強だなんて…?」 美童は不思議そうに肩をつぼめた。 「そういえば悠理、この前のテスト散々だったんだ!」 ポン、と思い出したように魅録が手を叩いた。 「そうですわよ。中間試験もそろそろですし、恋愛と浮かれている場合じゃ ありませんわよ」 野梨子はちらりと可憐を見た。 「わかってるわよ!」 ぷいっと可憐が顔を背けた先に、あの雑誌が床に落ちていた。 「あら?なんでこんなところに…」 拾い上げると星座占いのページが開かれていた。 「悠理ったら自分の星座のところ読んでたのかしら?」 どれどれ、と可憐は悠理の運勢を読み始めた。 全体運から始まり、恋愛運のところでぴたっと止まった。 『…本命は身近にいる冷静でいて強引な男性かもしれません…』 可憐は顔を上げ、清四郎と悠理が出て行ったドアを見つめた。 「ま、まさかね…」 あはは、と可憐は笑った。
可憐の放課後はつづく。
にゃんさんにいただいてしまいました、可憐ちゃんシリーズの第一弾です〜。 コミカルでかわいらしいこのシリーズ、なんか「頑張れ可憐!」と応援したくなってしまいますね。背後で蠢いている(笑)清×悠がおかしい♪ このシリーズは、可憐ちゃんが幸せになるまで続くんですよね?にゃんさん!
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