〜水のアジア〜




イラスト By ネコ☆まんまさま


 

朝目覚めると、窓の外から静かにノイズのような音が聞こえてくる。



―――雨が、降っている。
カーテンの隙間からは、眩しい日が差し、姿を見せぬ鳥の鳴く声が聞こえているというのに。



白い天蓋の垂れ下がるベッドの上で、僕はゆるゆると自分を取り戻す為の、形にならぬ思考を巡らす。

昨夜のことや、学生時代の夢。日常生活の、ありふれた出来事。

何故か子供の頃の記憶がふいに浮かんできたりすることもあって、枕に顔を埋めた僕は、懐かしさに微笑む。



シーツに包まれた体にじっとりと汗が浮かんでくるまで、僕はそうして目覚めの時を楽しむ。

東京にいる時には、目が覚めるとまどろむ暇もなく、すぐに起き上がって身支度を整えていたのに、この街に来るといつもこうしてだらだらとした時間を過ごしてしまう。

 

それは、この国に流れるゆったりとした時間の所為か、雨季特有のねっとりとした空気の所為か。



 

起き上がり、中庭に出るガラス戸を開ける。

雨が、真っ直ぐに降っている。
頭上に散らばる雲のどれから零れ落ちてくるのか、青い空と光の中に雨は降る。

椰子の葉に当たって滴り、ブーゲンビリアとハイビスカスの鮮やかな赤や、プルメリアの白い花弁に雫の珠を乗せる。
外の
空気は熱気を孕み、僕の肌にまた汗を浮き立たせる。




―――水のアジア。


たゆたうような時の流れ、むせ返るような香気、あふれ出すような生気。

その全てが、この雨の一滴一滴の恵みの中で生まれ、空気の中に満ちてゆく。

多くのものに分け与え、彼らの中を満たしても、少しも減じることがないほどに。



ここで時を過ごすうちに、それは僕の中にもたっぷりと満ち、いつしか愛しい人の形をとる。

空っぽの腕に力が戻るのを感じる。君を抱きしめたいという、欲望も蘇る。


一時も早く、君に会いたくなる。

 




 


ネコさまから強奪しちゃいました〜〜♪
「アジア」をイメージしたなんとも色っぽい男。
寝起きの豊作さんだそうです。(←嘘)

いえね、最初は見せて頂いただけだったんです、この絵。
でも、「こんな色っぽい絵を埋もれさせちゃあ、エ@リーヌの名がすたるわ!」と、駄文を送りつけて強引にアップ許可をゲット。

でも…もっと、このイラストに合った幻想的で官能的な文が書ければよかったのにな〜。
感想は、ネコさまのイラストについてのみ、お願いします。m(__)m




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