「有閑お仕置き人」番外編
文・イラスト BY かめおさま

 

 

「お仕置きよ!」
「お仕置きよ!」
「お仕置きよ!」


その夜も、世のためにならぬものをあの世に送った、有閑お仕置き人。
飲み屋『黄桜』にて祝賀の宴を催し、しこたま飲んで酔いつぶれた。
いいことをした後の酒は、ことのほか美味い。

翌朝、雀の声とともにもぞもぞと寝床からはい出た白鹿野梨子は、ふと隣に寝ている黄桜可憐の額を見て吹き出した。

「おほほほほ〜〜〜。まあ、可憐たら、誰かに悪戯されましたのね」
「ふえ」
寝ぼけ眼の可憐は、目をごしごしと擦ると、
「ぶふぉ」
と、吹き出した。

「野梨子、あんたどうしちゃったの。そのほっぺ」
「え?」
「朱で(お)って書いてあるわよ」
「何ですって」
野梨子は手鏡を持ってくると、自分の頬を見て眉間に皺を寄せ、可憐に向って鏡を向けた。
可憐のおでこにも朱で(て)と書いてある
「ほへ?」
「なんだ?」
次々に寝床から這い出てくる仲間たち。
「あ、あらっ」
「ど、どうなっちゃってるの〜」
清四郎の額には(お)、美童の頬には(し)、魅録の頬にも(し)、そして悠理のでこには(き)と朱で記されていた。
「なんだよ、これ?」
「ふむ、なにかの符号ですかね」
「俺たちに対するメッセージじゃないか?」
みな、お互いの顔を突き合わせ考えている。
部屋中、蒸れたような酒臭さが漂うが、それどころではない。
自分たちの闇の顔を知られたとなれば、誰に見られているともわからない。
みな、互いに酒臭いのを我慢しながら、話し合った。

「し…って死?」
「よせよ!縁起でもない」
「そうだよ〜。やめてよ」
「じゃあ、きって、キ●●イ?」
「馬鹿たれ。でも、なんで伏せ字なんだ?」
「いろいろ五月蝿いのよ、いまの世の中」
あ〜とみな納得したように頷く。

「よし、みんな、言葉に意味が出来るように並んでみましょう」
清四郎の掛け声で、みな移動し始めた。
「はい、一人ずつ、自分に書かれた文字を言ってください」
「し」
「て」
「き」

「お」
「お」
「し」

「ふむ、指摘多しですか…言葉にはなっていますが…よし、次」
また、みな移動する。
「お」
「し」

「し」
「お」
「き」

「て」
「お獅子起きて?なんじゃそりゃ」
「イマイチですね。次」
「て」

「き」
「お」
「し」

「お」
「し」
「敵、押し押し…ですかね」

「意味わかんね〜」
「はい、次」
「し」

「お」
「て」
「き」

「し」
「お」
「塩適塩?適量ならわかりますがね…次」
昨日の酒が残ったまま、ぐるぐると位置を移動しているうちに、みな気持ち悪くなってきた。
「あ、あたくし、駄目ですわ」
「あたいも〜」
「うえ、吐く」
みな、一斉に厠へ駆け出した。

その様子を、襖越しに見てにやりと笑ったのは…
オランダ商人のもう一人の息子、杏樹であった。
彼は、兄に仲間はずれにされ悔しかったので、ちょっと悪戯しただけである。
ちなみに彼が書いたのは「おしおきして」。
彼らがお仕置き人と知っているわけではなく、ただ、ほんのちょっと「お仕置きして」やりたかっただけである。





うわ、みんなでゲロゲロだよ。きったねえなあ…」

杏樹はそう呟くと、
「さて、家に帰ってかすて〜らでも食べようっと」
と、天使の笑みを浮かべて飲み屋『黄桜』を後にした。




おしまい





ちゃんちゃん(笑)。
かめおさんサイトでの感想カキコ一番乗り10回ゲット&KAMEO STUDIOの1234キリバンゲットのダブルでいただいた作品で〜す。私のリクは「neroさまの有閑お仕置き人」。(笑)いや〜、何か書かせてもうまいわ、かめおさん♪

neroさまのお許しを得て、当サイトでアップさせていただきました。お二人とも、ありがとうございます。m(__)m
(「有閑お仕置き人」本編はneroさまのサイト、「流るるがままに…」で、どうぞ♪)

 

 

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