Is this Love?

 

 

 

 

「いいですか、ここから対辺に垂線を下ろすと…」

 

とん、と清四郎の指が、ノートの一点を指し示す。

男のくせに、長くて、しなやかな指。とても武道をたしなんでるとは思えないような。

 

この指が、あたいを狂わせる。

この指が、あたいの内側でうごめくところを想像したら、下腹部に鈍い痛みが走る。

ああもう、我慢できない。

 

あたいはわざとらしく溜息をつき、シャーペンを放り出す。そして、あいつの手に自分の手を重ねた。

「なぁ…」

あいつの顔を見上げ、物憂げに囁く。

「……欲しいのか?」

何の表情の変化も見せずに、わかりきったことをあいつは聞く。

 

当たり前だ。

何の為に今まで、退屈な講義を我慢して聞いてやってたと思ってるんだ?

 

あたいは奴の手を取って立ち上がり、ベッドへと引っ張っていった。

膝を突いてベッドに乗ると、そのまま仰向けに寝転がる。

「早く…」

そう言って、清四郎の手をあたいの胸に導く。

「…いけないお嬢さんだ」

ベッドの縁に片膝をつき、清四郎が苦笑した。

 

ほっとけ。すました顔してられんのも、今のうちだかんな。

 

あたいは腕を伸ばして、清四郎の首を抱き寄せた。

熱い吐息がかかり、重ねられる唇。激しく舌を絡めながら、清四郎の手がせわしなくあたいの身体をまさぐりだした。

 

 

 

友人だった清四郎と、初めて身体を繋いだのは2ヶ月前。

中間試験前だったために、4日間ぶっ続けでこのフェロモン発散男と一緒にいて、あたいはもう辛抱出来なくなっちゃったんだ。

半ば無理やり押し倒したあたいに、清四郎は「一度だけですよ」なんて余裕かましてたけど、実際にコトが始まったら、無我夢中だったみたいだ。

 

―――どうやら、あたいの身体はひどく具合がよかったらしい。

それからも、誘えば清四郎に拒絶されることは無い。それどころか、心待ちにさえしているのを、あたいは知ってる。

いつもは取り澄ました顔をして、あたいをペット扱いしかしない男だけど、ベッドの中では、あたいと対等。ううん、むしろ、あたいの方が上。

いつもと立場が逆になり、あいつを翻弄してやれる。それも、たまんない。だからあたいは、繰り返しあいつを求める。

 

 

イラストBy えりんさま

 

 

「ああ…悠理、もう…」

あいつの腰に跨って、夢中で身体をゆすっていると、清四郎があたいの腰を掴んで懇願した。

こいつの切なげな声を聞くと、あたいの内側(なか)がかぁっと熱くなる。

 

「駄目。あたいまだ、イッてないぞ」

 

意地悪くそう答えて、あたいは腰の動きを止めた。

逞しい胸の筋肉に手の平を沿わせ、親指の腹で硬くなっている乳首を押しつぶすように弄る。

くっ、とくぐもった声を上げて反らされた咽喉に、強く吸い付いて痕を残す。

 

「そんなトコにつけたら、上着が脱げないじゃないですか…」

「いいじゃん。どうせほとんど脱がないくせに。ヒンコウホーセーな生徒会長様だもんな、お前は」

 

クスクス笑いながらなおも痕をつけてやると、清四郎はくっきりとした眉を顰めてみせた。

黒曜石のような瞳が、体内の熱に潤んで煌く。やや薄めの形のいい唇が、わずかに開く。

 

 

ああ。

本当に、なんて綺麗な男なんだろう、こいつは。

「世界の恋人」を自称する美童だって、こいつには敵わない。

こいつの視線や表情や動作、低い声の響きも汗の匂いも、全てがあたいの中の”女”を疼かせる。

こいつのすぐそばにいるのに、何も感じない野梨子や可憐が信じられない。

こいつはこんなにも、"男”なのに…

 

 

「くっ、悠理」

焦らされるのに耐えられなくなったのか、清四郎は起き上がるとあたいの背を支え、軽々と体位を変えた。

激しく突かれて、あたいの身体は跳ねるように揺れ動く。捏ね回される胎内の熱はいっそう高まり、溶け出しそうだ。

けれど、あたいは薄く微笑みながら、清四郎の目をじっと見つめてやる。まだまだ、そんなに感じてなんかいないって顔をして。

清四郎は悔しそうに唇を噛み、あたいの上にぐっと乗り上げると、垂直に落とすように突いてくる。何とかして、自分よりも先にあたいをイかそうとして。

でもその行為は、逆に清四郎自身の快感を高めるだけ。

すぐに堪えきれぬ様に、低い呻き声を漏らし、あたいの身体を抱きしめてラストスパートをかけてくる。

 

「ああ、悠理っ、悠理、ゆうり…」

耳元で繰り返される、あたいの名前。

少しうわずったその声と、熱い体液の迸りが、あたいを追い上げる。

ぴったりと重ねられた身体に縋り付き、あたいはあたいの全部で清四郎を受け止める。

痺れるような快感の波に自分をゆだね、その時だけは思いっきり声を上げる。

 

 

 

行為の後、あたいはしっとりと汗の浮いた胸に顔を寄せて、情事の名残に早打つ心臓の音を聞くのが好き。

ちょっとやそっとの運動じゃ、ここまで早くなることはない、鍛え抜かれた身体の鼓動に、なんとも言えない充足感を感じる。

頭を上げて、あいつの顔を見ると、とろん、とした目で見返される。普段隙のない男が、達した後にだけ見せる無防備な表情は、いつもあたいの胸を躍らせる。

 

だからあたいは、あいつの唇に口づける。すぐに応えてくる唇を軽くはみ、戯れるように舌先だけを絡ませる。

「ん……」

清四郎が軽くあげる声に、またあたいの下腹部が疼きはじめる。

もっともっと、身体を絡め合いたい。こいつを、もっともっと感じさせてやりたい。

 

 

 

こういうのを、「愛」っていうのかな? え、違う?

……どうでもいいや。清四郎とあたいの、身体の昂ぶりは真実だから。

 

 

end?

 

(2006.5.27up)

 

 

 


 

ふっふっふっ、えりんさまからいただいた「対になる悠理」。

その前にいただいた清四郎とで、ロールオーバー効果をかけちゃいましたよ〜。

どうぞみなさん、オンマウス、オンマウス…と、清四郎をいたぶってやってくださいまし。

さらに!えりんさまには他にも素敵なイラストをいただいていますのよ〜。

「えりんさまギャラリー」には、こちら からどうぞ♪

 

 

 

 

 

 

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