「ずっと…」
   BY あけさま



「えっ!あんた達ってまだなの?」

同姓同士が集まると、自然に出てくるこの手の会話。
昔のあたいなら、恋愛経験豊富の友人が云った言葉の意味に対し、
ただ気持ち悪いとしか思えなかったけど、
今では友人の云いたいことが、手に取るように判る。

そもそもあたいは、昔から日本有数の「財閥のご令嬢」として周りから扱われ、
美人と云われる母親譲りの顔立ちからか、近付いてくる男達は大勢いても、
所詮は財産狙い。本当のあたいを見ていないことは、幼い頃から感じていた。

「只の一個人の女の子」としての扱いを、一度もされたことがなかった。

ご子息、ご令嬢が通う学校には、あたいのことを知ってくれるヤツなんて居ない。
それが息苦しくて、いつの頃からか、
あたいはあちこちの喧嘩場に顔を出すようになった。
その場で親友と呼べる男と出逢い、そいつとふたり傷だらけになりながらも、
毎日充実した時間を過ごしていた。

そんなあたいを遠巻きに見てる学校の奴ら。
誰がチクるのか、何度となく呼び出される生徒指導室。

「あなたは女の子でしょ!もっと女の子らしくしなさい!」

だったら、あたいを女の子扱いしてよ!
みんなあたいのこと、女の子扱いしたことなんかない癖に!

結局、本当のあたいを見れくれるヤツなんか居ない。
ずっとそう思ってた。

「あなたを財閥の令嬢としてではなく、只の一個人の女の子として愛しています」

だけど、たったひとりだけ、
あたいを一個人の女の子として見てくれるヤツが居た。
それも、すぐ傍に―――

そいつは、出逢った頃は、あたいより弱くて、
大和撫子の代名詞と云われる幼なじみに、庇って貰っていたのに、
いつの間にかあたいを片手で守れるくらい強くなっていた。

「ずっと僕の隣で笑っててくれませんか?」

あいつに真剣なまなざしでそう云われた時、自分でも顔が赤くなるのが判った。
これまであいつには、女の子どころか、人間扱いされてないと思ってたのに、
あいつは、口では叱咤しながらも、ちゃんとあたいを女の子として大事に扱ってくれた。
心の何処かでずっと女の子扱いされたかった癖に、
初めて女の子扱いされたことに、ただ戸惑うしかなかった。
恥ずかしくて、暫くあいつの顔がまともに見れず、随分あいつを傷付けてしまったことも ある。

でも、あいつの気持ちは、泣きたくなるほど嬉しかった。

そんなあたいの気持ちが判ったのか。
仲間たちがあたいとあいつのために、奮起になってくれた。

「自分の気持ちに素直にならないと、あとで後悔することになりますわよ」
「ふたりが付き合ったって、俺たちの友情は変わらないだろ?」
「大丈夫だよ。自分に自信を持って」
「あんたたちには、誰よりも幸せになって貰いたいのよ」

みんなの気持ちが嬉しかった。

「あなたを誰よりも幸せにします」

あいつの気持ちが嬉しかった。

そして―――
みんなのおかげで、あたいはあいつの隣で、笑うようになった。

「付き合ってもう半年でしょ?それなのにまだなの?」
「べ、別にいいじゃんか。まだだって・・・」
「なに云ってんの。お互いが欲しいと思うのは自然なことでしょ?
そういう雰囲気になったことないの?」

確かに、何度となく遊びに行ったあいつの家で、そういう雰囲気になったことはある。
だけど、あいつはいつだって、あたいのことを考え、無理強いはしない。

「あなたのことが大事だから、あなたのペースに合わせますよ」

外見は大人になっても、何処か幼さの残るあたいに、ゆっくり合わせてくれている。

そんな時、いつも思う。
あたいは、あいつに凄く大事にされていると。

でもさ。
あたいもいつまでも子供じゃない。
ありのままをあいつを受け止める覚悟は出来ている。
ありのままをあたいをさらけ出す勇気も持っている。

だからね、思いっきり抱きしめて欲しいんだ。
息も出来ぬくらい、あいつの腕の中で身動き出来ないくらい力強く。

そして、あいつの腕の中で、こう云いたいんだ。

あたいのこと、ずっと抱きしめていてね、って―――


〜FIN〜







BBSを読んで、ウズウズしていた皆様、お待たせいたしました。(笑)
あけさまからいただいた、悠理たんの心情を描いた素敵なSSです。
実はあけさまは、「いるかちゃんにヨロシク!」の二次サイト「Ake's iruyoro room」の
管理人さまなんですよ〜。
「いるヨロ」については、以前フロさんちの絵版で「いるかちゃん=悠理、
晴海=清四郎」とのお話が出ていましたね〜。なるほど、通じるものがあります。
あけさま、これっきりなんて言わずに、またヨロシクね。




Gift
Material By Four seasonsさま